秋は交通事故が多いのですが、その一つの理由は行楽などが増えて、運動会などで少し浮かれてしまうとも言われています。

 

人間は「変化」に弱いところがありますが、たとえば「臭い」がその典型的なものの一つです。ほとんど臭いに無いところで生活していますと、少しの臭いでも気がつくけれど、強い臭いに慣れてしまうと判らなくなります。このように人間の五感は特に「現状追認型」で、すぐ現状に合わせてしまいますし、また「変化を嫌う」という性質もあるようです。

 

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このような人間の五感の特徴が被害につながることもあります。その一つが秋に多く発生する交通事故です。人間の目は明るさの変化に弱く、日が落ちて薄暗くなる時に瞳孔が追従できません。たとえば6月、7月はドンドン日が長くなってくるので、暗さに慣れていた目はかなり暗くならないと「暗い」とは感じられません。

 

6月、7月の交通事故のピークは相当暗くなった8時頃ですが、10月から12月は明るい季節から暗い季節へ変化するので、目は明るい方が得意になっていて、日も短くなるので交通事故のピークは5時ごろにずれます。

 

5時というと、時間帯としては帰宅時間です。歩行者は家路に急ぎ、車の運転手は人がよく見えないということになります。つまり、6月、7月は5時頃はドライバーが歩行者をよく見えるので交通事故は少なく、8時頃に見えにくくなると、すでにこの頃には歩行者が少ないというわけです。

 

10月から12月は死亡事故が5時の時間帯1時間あたり600人(1ヶ月の合計)にも達するけれど、6月、7月はピークと言っても200人ですから、3分の1ほどになっています。

 

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交通事故死を減らすということを考えるとき、車道と歩道を分けたり、ガードレールなどを改善すること、交通道徳を教育すること、それにGPCなどを駆使して飛び出してくる子供を察知することなどがありますが、もう一つ、このように人間の特徴を考えて減らす方法もあるでしょう。

 

たとえば、10月から12月は5時頃に退勤にならないように工夫するなどです。「電力を節約するために夏時間」というのは「経済で人の生活を左右する」ということになりますが、そのような考えではなく「人の命を守るために勤務時間を変える」とか「10月から12月は4時頃からヘッドライトを点灯するなどの方法が有効かも知れません。

 

 

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(平成23929日)