先日、九州に行ったときに、ある人と話がはずんだ。私が「3月11日まで原子力のみんなが11ミリと言っていて、0.01ミリに決まったクリアランス・レベルが去年で、たしか今年の2月に電離放射線関係の法律改正もあった。それがとつぜん、312日になると、ほとんどの人が180度違うことを言い始めたのはビックリした」と言った。

 

そうしたら、その人が「どなたも自分の意見がなかったんじゃないですか」と私には意外なことを言われた。なにしろ、国の委員というと東大教授やその手の人だから、普段からうるさいほど「自分の意見」をおっしゃる。その人たちが自分のご意見を持たないというのも奇妙だ。

 

でも、その後しばらく2人で話をした結果、「311日までは11ミリと言うことになっていたからそれを主張し、312日からはみんなが1100ミリと言い出したから、その様子を見て100ミリとか20ミリとか言った」ということになった。誰一人として「本当に子供に被曝させて良いか」などと考えてはいないというのだ。

 

さらに話をしているうちに、「みんながゆとりと言うからゆとり教育」、「ドイツがリサイクルしていると言うからリサイクル」、「これからはレジャーの時代だというからレジャー」というだけだということになった。たしかに、ドイツの音楽隊が「日本は放射線で汚れている。食事は放射線量を測る」と言っても、それが日本の空気でなければ、追従しない。

 

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そういえば、「南極が温暖化すると氷が増える」のが当然だし、IPCC(国連の地球温暖化政府間パネル)の報告書にも「温暖化しても氷は融解せず、雪が増えるので氷は増える」と明記してあるのに、日本の政治家やマスコミ、専門家が口をそろえて「南極が温暖化すると氷が融ける」と言っていたのに驚いたことがあるが、これも何も考えずに世間の通りに繰り返していたのだろう。

 

温暖化したら南極の氷が減るか増えるかというのは、きわめて簡単な問題だから、高校生ならほぼ間違えない。南極の気温はマイナス40℃だから5℃あがってもマイナス35℃だ。マイナス35℃で氷が融けると思う人はいない。一方、海が暖かくなるから蒸発量が増えて雪が増える。氷が融けずに雪が増えるのだから、氷は増えるに決まっている。IPCCもそういっている。

 

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温暖化が怖いかどうかと、科学的事実を正確に伝えることとは違う。なぜ専門家がこんなことを間違えるのかと不思議に思っていたが、たしかに312日から急に専門家の言うことが変わったことを考えると「何も考えていない」というのも本当かも知れない。

 

ところで、「11ミリ」というのは「予防原則」に則っている。予防原則は「科学的に影響が不明なとき、重大で取り返しのつかない損害が起こる可能性のある時には規制を厳しくする。安全だと判ったら規制を止める」ということであり、とても納得性があると思う。もし被曝しても風邪を引くぐらいなら15ミリか10ミリでも良いと思うが、ガンや遺伝子障害だから、やはり11ミリは妥当だ。

 

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(平成23919日)