(注)タバコに関する一連の記載は「タバコを認める」というような「方向性」を持ったものではなく、「自分の健康ぐらいは自分で考える」という「大人としての考え方」を私自身が探っているものです。この回の結論は見かけ上「タバコ容認」とみえますが、次回はまったく正反対になる予定(現在はまだ解析中で一部のデータがそろっていない)です。くれぐれも「結論ありき」としては考えないでください。

さて、タバコは「本人の体にお酒程度のダメージを与えるぐらいのもの」なのか、それとも「社会的に影響を及ぼすほどの害があるのか」についても慎重に考える必要があるのかということを取り上げたいと思います。

 

このシリーズは大震災と原発事故を経験した日本人が「政府やマスコミに言われたとおり」ではなく、自らデータと論理を駆使して考えることを目的にしていますので、「聞くまでもなくタバコは禁止すべきだ」というご意見の方は、この後は血圧が上がるかも知れないので、お読みにならないでいただきたいと希望します(また副流煙や汚れなどの問題は後に取り上げます)。

 

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タバコが健康に悪いということは臨床的には明らかで、肺がん、気管支障害、血液障害などを誘発することがよく知られています。特にお医者さんは「体の故障を直す」ということを本業にしている場合が多いので、どうしてもタバコのように体に害のあるものを忌避する傾向があります。

 

お医者さんの多くはかなりのお酒を召し上がります。だから「毒物はすべてNO」という訳でもなさそうです。それでもタバコを吸っている方は少なく、その点からもお医者さんのご判断を見ることができます。ただ、お医者さんという職業が「お酒は求めるが、タバコは職業的に不要である」ということも考えられます。

 

昔から新聞記者、作家、営業マンなどは喫煙率が高いので有名ですが、彼らに聞くと「仕事が一段落した後のタバコはこたえられない」と言います。つまりある程度、頭脳を使ったり人に会ったりしてストレスがたまったときにはストレス解消剤としての役割を持っているのかも知れません。

 

もしかすると「タバコを必要とする人」は喫煙派、「タバコを必要としない人」が禁煙派というだけかも知れません。その点のよく考えてみたいと思います。

 

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まず、全体像を見てみたいと思います。タバコを吸う人はかつて(おおよそ40年ほど前)からは男性が半分、女性はほとんど変わっていません(第一のグラフを参照してください)。

 

 

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次に、「タバコを吸うと肺がんになる」と言われますが、喫煙者が減っている間、肺がんは減ってきたかというと、むしろ増えています。このグラフは非常にそれがハッキリと示されていて、男性ではタバコを吸う人が半分になったのに、肺がんは7倍ぐらいに増えています。また女性では喫煙率は変わらないのに、肺がんは男性と同じように数倍にもなっています。

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ここまででは「タバコを吸わないと(吸うのではなく、吸わない)肺がんが増える」ということになり、「タバコは肺がんを防止する」という「奇妙」な結果に陥ります。科学というのは実に難しものでデータの取り扱いによっては、正反対の結論が出る場合があり、それ故に、データからなにかを言うときには可能な限り先入観を無くし、利権や名誉などから心を離しておかないとならないのです。

 

また女性は喫煙率はほとんど変わっていないのに肺がんになる人が増えています。「タバコは肺がんの原因になる」という先入観があっても、このデータを覆すのは困難です。

 

 

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そこで、ガンのもう一つの尺度・・・年齢・・・を見てみます。日本人の平均年齢が戦後、急激に高まったことはよく知られています。このグラフは日本人の平均寿命の伸びを示していますが、今から100年ほど前は40歳ぐらいだったのが、ほぼ2倍になっているのですから、本当に良い国に生まれたものです。

 

そして、年齢とガンにかかる比率について見てみますと、これもハッキリした傾向があり、「年齢が高くなるとガンにかかりやすい」という傾向が見られます。

 

 

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そしてこれらの4つのデータに基づいて、まずは素直に考えてみます。先入観はすべてとりあえず横の方に置いてください。科学者の心構えのもっとも重要なことはデータそのものを見るということですから。私は長く科学を仕事としてきましたが、科学者としての私は次のように判断します。まず事実の整理。

 

1) 日本人の平均年齢は2倍になった。

 

2) 日本人男子の喫煙率は2分の1になった。

 

3) 日本人女子の喫煙率は変わっていない。

 

4) 男女とも肺がんにかかる人は5倍以上になった。

 

5) 長寿になると肺がんが増える。

 

6) 日本人男子ではかつては80%、今は40%が喫煙していて、その平均を60%とすると、成人男子の数を5000万人として約3000万人が喫煙している。それに対して肺がんは年間5万人で、1年で平均100万人が死亡するとして、喫煙者が平均60万人。従っておおよそ8%の喫煙者が肺がんになっていることになる(次回に整理するが、肺がんの原因のうち、タバコが原因の肺がんは限定されるので、8%より低い)ことがわかる。

 

次に「考察」にとりかかります。データとしてはまずはここで示した4つのグラフだけということにします。科学は一つ一つを慌てずにかんがえます。それは自然というものは結構難しいので、あれこれと考えると間違えるからです。

 

1. 女性の場合、喫煙率が変化していないのに肺がんは男性と同じ比率で増加していることから、喫煙と肺がんには強い関係がないということになる。

 

2. 肺がんの決定要因の第一は、長寿であり、長生きすると肺がんになる確率が上がる。

 

3. 仮に喫煙が肺がんの主要な原因の場合、男性の喫煙率が変化し、女性が変化していないのに、肺がんになる比率が上がっていることを説明できない。男性と女性に特別な差があることが考えられるが、その場合は「喫煙と肺がんが関係がある」と一般的に表現できないことになる。

 

4. 喫煙者で肺がんになる人の割合は8%以下であり、「喫煙で肺がんが増加する」ことがあり得ても、「喫煙すると肺がんになる可能性が高くなる」という表現は正確かどうか不明である。

 

ということになります。実に奇妙(常識と違う)な結論で、欧米人と日本人の差などさらに考えないと単純には「タバコと肺がんはほぼ無関係」ということになります。

 

(放射線被曝とタバコが違うのは、タバコの規制はまだ法律ではできていないので、法律にする前に十分な議論をしておかないと、放射線被曝のように、現実の問題が起きると、それまでと全く違うことを言う人がでてくるからです。タバコの値段を「健康のために」700円まであげると大臣が言われた時が良い機会と思います。)

 

(平成2396日)