福島原発の事故が起こるまで、社会で信頼を置いているところがありました。

その一つが、がんセンター等の医療機関です。医療機関には多くの医者さんがおられて、日夜我々の健康を守ってくれるということについて強い信頼感を持っていたのです。

確かに、お医者さんのなかにもいろいろな人がおられて、ちょっと?と首を傾げたくなる方もおられますが、多くの医者さんは、たとえば外科手術をしたあと、どんなに疲れていても徹夜で患者さんを見ていただいています。

その点では現代の日本社会において、お医者さんの集団は尊敬に値します.「健康第一」という点でお医者さんの発言がぶれることは希でした。

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ところが原発の後、わたくしはお医者さんについて若干の疑問を感じるようになりました。特にがんセンターです。

日本にがんが増えてきたのは、高度成長政策が成功して日本人全体の寿命が延びてきた頃からですが、その頃のガンセンターといえば本当に救いの神でした。

自分がもしガンになっても、運命なら仕方が無いけれど、少なくともガンセンターでできることはしてくれると信じていたからです。

ところが、今月の初め、ガンセンターの先生とご一緒に国会の委員会で参考人として陳述した時に、がんセンターのお医者さんが、

「たばこを吸ったり、野菜が不足したりする方が放射線より危ない」

と言われたのでびっくりいたしました。

感染症に対する対策が十分に進み、成人病が押さえられたら、日本人の多くはがんで命を終わることになるでしょう。

そうなると、日本人のほとんどがガンで死ぬのですから、たばこを吸った人、野菜が不足してる人、お酒を飲む、辛いものが好き、ケーキ・・・、全ての要因が、交通事故や放射線で被爆して死ぬ人より遙かに多くなります。

酔っぱらい運転が原因でひかれて死ぬ人は数100人に過ぎませんが、人口の1%が死ぬ原因でも100万人ですから、酔っぱらい運転は許されるはずです。

ガンセンターの先生は、

「酔っぱらい運転も大したことはない。ケーキを食べてガンになるよりずっと安全だ」

と言うと思います。

今、ガンセンターのお医者さんが言っていることはそれとまったく同じなのです。

こう言われました。

「日本人でガンになる人は人口の3分の1で、1年に40万人です.それに対して福島原発で被曝して死ぬ人は1万人もいないでしょう。だから、被曝しても良いのです。」

そんな先生に全く診てもらいたくはありません。とんでもないことになります.

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読者の方から次のような「議事録」をお寄せいただきました。

ガンセンターの医師 「……100mSv未満の低線量域での放射線の人体への影響については、ほぼ影響がないことを示唆する報告及び何らかの影響を示唆する報告の双方があるという答えのような書き方をしているんですけれども、どう考えても圧倒的に、要するに100mSv以下で発がんのリスクがないということを示している研究の方が圧倒的に多いんです。」

この先生はたびたび大規模なガンの要因調査をされていて、私も何時も参考にしています。でも、こんなことに使われてはとんでもないことです。

仮に100ミリシーベルト以下でガンのリスクが少ないのであれば、国際的に11ミリシーベルトの規制等が誕生しないからです。今まで、1年5ミリ、0.5ミリといろいろな規制の変遷を経て、また医学の進歩を踏まえて1980年に1年1ミリが決まっているのです。

それには膨大な論文があり、「具体的な論証は不足しているが、世界的なガンの発生の状況から、放射線がガンを誘発する危険性は十分に高い」ということから、決まっているのです。

公衆のガンの発生要因を調べている先生ですから、この経緯は十分にご存じと思います。

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このブログでも朝日新聞論調などを批判してきました。

天寿を全うして死亡する方の原因分析と、原発が爆発して被曝してガンになる子供のリスクを比較できないという単純なことも判らないのなら、ガンセンターを止めていただきたいのです.

お医者さんはあくまでも「病気の危険性を回避する」という基本的態度が必要です.

そして、ここで再びこの問題を取り上げたのは、ガンセンターの先生のご発言が、野菜やその他の「暫定基準値」をドンドン引き上げる道具として使用されているからです.

また東京都を中心として、本来なら法律を守るべき立場にある自治体の多くの職員が市民に向かって、1年100ミリまで大丈夫だと言って冷たくお母さんの心配を退けていますが、それもガンセンターの医師の発言が聞いています。

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私にはお医者さんが「子供達を被曝させたい」という行動に出る理由がまったく理解できません.

もう一度、訴えたいと思います。

お医者さん! 天寿を全うして亡くなる方の要因が「タバコ」や「野菜不足」であっても、それと「放射線被曝」あるいは「酔っぱらい運転」で犠牲になる子供達とを比較しないでください!!

(平成23623日 午後4時 執筆)