東京都が放射線の測定を始めましたので、急にテレビなどで「どのぐらいなら大丈夫なの?」という話が蒸し返されてきました。

少し前、文部科学大臣が「子供は1年20ミリシーベルトまで我慢せよ」といって顰蹙を買ってから2ヶ月が経ちます。まだ、政府もマスコミも「国民はなぜ被曝させられるのか?」という基礎的なことが判っていないような気がします.

特にテレビにでる、いわゆる「専門家」の方も技術的なことはおわかりになっているようですが、放射線被曝のもっとも大切なことまでは頭が回っていないようです。

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原爆と原発が生み出されるまで、人間は「自然放射線」だけしか被曝していませんでした。人間が「核爆発」を起こすことは無かったからです.

広島・長崎に原爆が落とされ、さらに太平洋などで多くの核実験が始まってから日常的に「人工放射線」で被ばくする事になります。さらにチェルノブイリがあり、今回の福島になりました。

戦争に使う原爆を別にすると、「人間が被曝する」のは、次の4種類になりました。

1)   自然放射線からの被曝

2)   原発からの被曝

3)   医療の被曝

4)   原子力研究などの被曝

自然からどのぐらいの放射線をあびるかは「人間が決めることではない」のでこれをまず「別枠」にします。

また、「自分で希望する」か「強制されるか」で2つに分けます.

そうすると、「自分の希望で原子力や放射線の研究をする」場合は別にしなければなりません。

いくら自分の体とは言っても、むやみに傷つけてはいけないので、国としては一応の制限をしています。それが1年20ミリシーベルトです。

医療用は「自分の体を治すため」に「若干の損害は仕方ない」ということでレントゲンやCTスキャンを受けます.日本の医療は世界的に見て極端に被曝が多いのですが、それでも日本人は心配性なのでしょう、「少しでも体を治したい」という希望が強いので、「損も仕方が無い」と考えられているからです.

ここまでで、判るようにもともと地上にない人工的な放射線の溜めに「被曝する」というのは「被害を受ける」ということを意味しています.それももともと「放射線を出す人がいなければ、被害を受けることはない」ということですから、「トバッチリ」とも言えるからです.

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つまり、自然放射線を別にすると、

1)   自分が希望しない被曝は原発だけ、

2)   原発で被曝(損害を受ける)しなければならない原理原則は存在しない、

3)   みんなが「電気が欲しい」ので被曝する、

という理屈になります.このような「被曝の本質的な意味」を良く理解しておくことが大切です.

●電気の利得=テレビ、エアコン、オール電化など

●電気の被害=1億人で5000人の発がん

を同じにしようということで、「1年1ミリシーベルト」が決まりました。1989年のことです。

この「損得計算」は人によって違うでしょう.

ある人は「電気でガンになるなんて」と思うでしょうし、別の人は「ガンになっても電気が欲しい」と考えるからです。

また、全世界で一つの基準を作らないと、海外旅行や海外の水を買うのも危険になりますから、1つに決めなければなりません。

そこで、全世界で1つ(1ミリ)にしたのです。日本の文部科学大臣が決められるようなことではなく、全世界の人の「人生観」で決まっていると言うことです。

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自然放射線と比較する人がいますが、自然放射線とはまったく別のもので、「電気会社が自分の意志で放射線をまき散らしている」ということが違います.

医療用と比較する人がいますが、自分の体を治すために、仕方なく被曝しているのです。医者が強制するものでもありませんが、医療については医師が判断するので、見かけ上、医師が決めているように見えるだけです。

研究用と比較する人は少ないのですが、職業上の被曝限度が20ミリとなっているのに、みんな「被曝は損」と思っていますので、日本の実績はわずか「1年0.7ミリ」です。

それもすべて「外部被曝+内部被曝」ですから、東京の0.1マイクロ(1時間)はかなり高く、放射線を出している東京電力は深く反省し、補償しなければならないのです。

それを東京都が「健康に影響がない」などと言う権利もなにも無いのですし、専門家と言われる人も被曝の原理原則を踏まえて発言をしていただきたいと思います.

(平成23618日 午前8時 執筆)