「電気」とか「エネルギー」というのは「ごつい・大がかりな」ものですから、去年は原子力、今年は自然エネルギーというわけには行きません。

つまり、戦艦大和ですから、舵を切ってもおいそれと方向を変えることができないのです。

でも、日本人はオッチョコチョイのところがあって、地球温暖化が心配になると「これからは原子力の時代だ!」と叫んでいました。

たった1年前なのに、今はすっかり様子が変わっています.

その頃、私は盛んに「地球が温暖化すると、原発が安全になるのですか?」と冷やかしていました。

そして、今度は「原発が事故を起こしたから自然エネルギー」と言われ始めました。そんなややこしいことをするなら、去年から、

「原発は飛ばして自然エネルギー」

にしておけばよいのです。

そこでこのシリーズでは「すぐには変わることができないエネルギーを、子供のためにじっくりと勉強し、間違わないようにしよう」という目的で始めたいと思います.

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今から10年ほど前でしょうか、その頃、私は「石油や石炭などの化石燃料は40年後には無くなる」と思っていました。

「40年」というが少し伸びても、せいぜい60年とか80年とかだから、子供達のためにも将来のエネルギーを準備しておかなければならないと信じていたのです.

そして、私のある著作に「石油や石炭はそのうちに無くなるから」と書きました.そうしたら、それを読んでいただいた私の大学時代の恩師が手紙をくれました。そこに1行、

「武田先生はなぜ石油や石炭が無くなると考えたのですか?」

とありました。すでに私の大学時代の先生はご退職になっておられましたから、私は手紙を読んだときに「先生もお歳を召して・・・」と思ったものです。

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でも、先生の言葉はなんとなく心にひっかかり、電車に乗ったときなどにフト考えるようになったのです。

確かに「石油や石炭は枯渇する」とテレビも新聞も言っていました.そればかりではなく、資源学の本や石油や石炭の専門家の多くも「地下資源は有限だ」と専門書に書いてあります.

しかも、石油や石炭はすでに発見されている油田や炭田の他に、「究極埋蔵量」と言って、最終的に人間が採掘することができる量も判っているのです.

どこからみても、まもなく枯渇することは間違いない・・・でも、なんで先生がわざわざお手紙で私に注意をされたのか? 先生がお歳を召したと言っても頭脳は明晰なはずだ・・・その疑問は解けませんでした.

そこで、私はこれまで判断のもとになってきた書物を読んでみることにしました。

読み始めると、これまで「資源は枯渇する」ということを前提に読んでいたのに、新たに「資源は枯渇するかどうか不明」という気持ちで読むと全く違う印象を受けたのです。

その一つにメドウスの「成長の限界」という本がありました。1970年代の初めにもてはやされた本で、「資源、人口、工業化・・・」など今の文明はあまりに物質を消費するので長くは持たないということが書かれていて世界的なベストセラーになった本です。

なにしろタイトルが「成長の限界」で、「大量生産、大量消費社会はやがて潰える」という誰でも納得できる理由がついて、宣伝されたものです。

ところが、改めて読んでみると、「1970年の状態がそのまま続いたら」という前提がハッキリと書いてあるのです。そしてその前提は2000年にはほとんど成り立っていなかったのです.

「そうだったのか!」と私は思い、改めて「資源は枯渇するのか?」を計算したり、考えてみようと思ったのです.

何時の世も、恩師とは大したものです。

(平成23617日 午後2時 執筆)