海の汚染が難しくなってきました。

「難しい」というのは、魚や海藻が食べられなくなるという意味ではなく、人類が初めて体験する「海の汚染」というものが、かなり複雑な様相を見せそうだということです。

陸に降り注いだ放射性物質もややこしいものですが、それでも畑に降った「粒」は次第に地中深く下がっていくだけですし、そこに植えたホウレンソウも足がないので「歩きません」.

でも、海は、

「海流が激しく、魚が泳ぐ」

という二つの動きがあり、さらに

「深さ」

もあるので、なかなか考えるのが難しいのです.

それに加えて、「東電の妨害」があります。

東電はすでに福島原発から漏れた水の分析を終わっていると思います.その水は原子炉の中を通ってきていますので、蒸発しやすい核種(軽い元素か化合物)も、沈殿しているもの(重い元素や化合物)も両方を含んでいると思います.

具体的に言えば、ヨウ素、セシウム、ストロンチウム、プルトニウムは含んでいるのは間違いない。あまり期待していないが、国民の健康のため発表を求める必要があります。

「海を分析する」より「東電から何が漏れたか」が判る方が正確に事実を把握できるからです。

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海に漏れた元素はヨウ素、セシウム、ストロンチウムが主で、ヨウ素は海藻に、セシウムは中型から大型の魚の肉に、ストロンチウムは小魚にたまり、それが人間の体に入り、ヨウ素は甲状腺、セシウムはいろいろなところ、ストロンチウムは骨に入るでしょう.

今のところ、福島から千葉以外の海は強く汚れていることはありませんが、今後の動きに注意しなければならないと思います。

私は年齢的にもそれほど注意しなければならないことはないのですが、小型の魚は避けるようにしています.

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ところで、問題は「地産地消」や「風評」のかけ声で生協やスーパーが全国に運んでいる汚染された食材、検査を拒否したお茶の葉、瓦礫、それに魚、海藻が「ゴミ」として捨てられ、それが「焼却炉」で焼かれると、その煙のなかには移動した分の放射性物質がそのまま出てきます.

放射性物質のやっかいなことは「煮ても焼いても、無くならない」ということです。「なにかを使って放射性物質を除く」というのは、「無くなる」のではなく、「別の場所に移す」ということです。

もっとも問題になるのは、「海水にでたプルトニウムが、魚に取り込まれ、それを調理したり、食べた人が残りを生ゴミに出し、焼却した場合」です。

プルトニウムは胃に入ると、人間は消化器からは取り込みませんから危険は少ないのですが、プルトニウムの微粒子が肺に入ると肺ガンになります.

つまり、プルトニウム問題は魚を食べることより、たとえば魚を裁いたり食べたりした残りを生ゴミに出し、それを自治体が焼却すると、プルトニウムの微粒子が自治体の焼却炉の煙突からでて、肺に入ると言うルートです.

これはかなり問題になるでしょう.

まだ、環境省はもちろん、各自治体も「放射性物質で汚染されたものを移動する」ということがどのような影響を与えるか、ほとんど考えてはいません。

彼らは、縦割り行政の中で、日本人の健康とは関係なく、自分たちの仕事だけが片づけばよいというどうにもならない考えだからです.

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海の問題のもう一つやっかいなものは、「ストロンチウムやプルトニウムは測定に時間がかかるので、魚が腐った後、測定値がでる」ということです。

お寿司屋さんなどはどうなるのかと心配です.

海が汚れてきて、魚から放射性物質がでるようになると、「刺身や寿司」はすべて冷凍の魚を使わざるを得ないでしょう.つまり、検査結果が出てきてから食べるしかないからです.

福島原発のことで、日本の食の伝統が守れなくなるかも知れません.

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海の汚染は、イカナゴから始まり、今は藻類がもっとも汚染されているようです。これから6月になると中型の魚、7月は大型と順次、移ってきます。

魚や海藻、貝は日本の食生活の中心をなすものです。東電がデータを出すのはもちろん、政府の機関は全力をあげて魚の放射性物質の測定をして、確実なデータを早く提供して欲しいと思います.

(平成23529日 午前9時 執筆)