放射線をどのぐらいあびたら危険か、ということは今、福島やその周辺にお住みの方の、もっとも強い関心事と思います.

また福島から遠いところでも、土壌、茶葉、野菜、牛乳、魚などに不安を持っている人も多いようです.

そこで、「なんの立場もなく、深く反省しているわたし」が、自分の知識を整理して、完結に示してみたいと思います.

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まず、「現代の医学で判っている範囲」ですが、それは

「1年100ミリシーベルト以上、あびるとガンやその他の病気になる」

ということです。

さらに医学が発達すれば、1年100ミリシーベルト以下でどのようなことが起こっているか判ると思いますが、現在の医学のレベルでは100ミリシーベルトまでしか判らないのが現状です.

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次に、100ミリシーベルト以下ですが、医学的には判らないので、学問的に推察することになります.

「医学」と「学問」は何が違うかというと、医学も学問の一つですが、遺伝子学とか、材料劣化、さらにはリスクに関する学問など放射線と健康に拘わる学問は数多くあります.

たとえば、遺伝子はDNAで出来ていますが、実験でDNAに放射線を照射する実験をするとDNAが損傷します.放射線より弱いエネルギーをもつ紫外線でも損傷するのですから、化学的には当然でもあります.

DNAが損傷すると、ガンや遺伝性の病気になりますが、生物の体は自分でDNAの損傷を治すことが出来ますので、「どの程度の損傷なら、人間の体は修復できるか?」ということになります。

そこがややこしいところです。

そこで、医学ばかりではなく関係する学問を総動員してデータを集めると、

「どうも1年1ミリシーベルト以上を被曝すると、1億人に5000人ぐらいのガンが出るらしい」

「交通事故やその他の社会的なリスクから見て、1年1ミリシーベルトぐらいで「我慢」すると決めれば、国際的に合意できる」

ということが決まりました。

つまり、1年1ミリシーベルトと「限度」は、医学的なデータはないけれど、多くの学問的な知見や現代社会に生きている人の感覚から言って「我慢できる」という「限度」として「国際的に合意できる」ということです。

国際的な合意が大切なのは、私たちが海外旅行をしたり、海外のレストランで安心して食事をしたり、さらには海外から輸入されたペットボトルの水を安心して飲むためには、国際的に同じ基準になっていないといけないからです。

もし日本が1ミリで、どこかの国が100ミリとすると、海外製品を買う時にいちいち、生産国やその国の法律を知らなければならないので、とても面倒です.

だから、1年1ミリというのは、それなりにハッキリした根拠を持っています.

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3番目。

つまり、1年1ミリというのは、「誰でも」、「どこでも」、1ミリなら安心できるということです。

「誰でも」というのは、赤ちゃん、体の調子が悪い人、レントゲン検査をかなり受けた人・・・などを含んでいます.

また「どこでも」というのは、土地によって自然放射線のレベルもさまざまですし、一時的に何らかの食材などで被曝することもあり、それの余裕も考えています。

でも、1ミリを越えるところもあります。

そこで、日本では3ヶ月で1.3ミリシーベルト、つまり1年で5.2ミリシーベルトという基準もあります。「管理区域」などがそれに当たります.

この場合、

1)   

健康状態に注意する、

2)   

バランスの良い食事をする、

3)   

体調を整える、

4)   

1)から3)を守れないところでは時間制限をする、

というものです。

たとえば、放射線が少し多めの病室に入院するような場合などがそれにあたります。

1年1ミリにしても、1年5.2ミリにしても、「総合的判断」と「経験」で「安全」と決まっているもので、それ以上でもそれ以下でもありません。

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4番目。

文部科学省の大臣は「1年20ミリまで安全」と言っていますが、そんなことは世界のどこにもありません.

ICRPという任意団体(NPO)が、

1)   

事故の時にはやむを得ず1年20ミリシーベルトまで認めることができる、

2)   

1年20ミリの場合は、1年1ミリに比べるとガンの発生率が20倍に増える、

3)   

しかし、「短期間」で、「1年1ミリまで回復する努力をして」、「個人個人に具体的な利益がある場合」に限定する、

となっています.

文科省が1年20ミリを決め、それからいい加減な計算をして1時間に3.8マイクロシーベルトという基準を決めましたが、これに対して「安全かどうか不安」という声がありますが、当然です.

もともと、1時間3.8マイクロシーベルトが安全などというデータも学問的知見も全くないのです.

強いて言えば、「1時間3.8マイクロシーベルトが危険であるとも安全であるというデータもない」ということです。

神様だけが決めることが出来るもので、文科省の大臣は神様になったようです.

私が「除染」が前提だと言っているのは、「事故でやむを得ず20ミリにするときでも、1ミリにする努力が前提で、しかも被曝する子供達に何らかのメリットがなければならない」からです。

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今、国会の委員会室の椅子に座っていて、これから参考人として委員会で陳述します.

(平成23520日 午前8時30分 執筆)