みんなが不安に思っている現在、私のような専門家が(打ち合わせなく、結果として)同じ事を言うことになるのが大切でしょう。そうしないと一般の人は不安に思います.その点では、私とテレビなどに出ている専門家との間にかなりの違いがあります。

本当は違いはないはずです。私も原子力の仕事を長くしてきましたし、第一種放射線取扱主任者ですから、同じ試験問題を解き、合格し、それを元に仕事をしてきたのですから。

そこで、少し深く考えてみました。

政府、テレビの専門家、NHKなどは、福島原発で放射線の汚染の数値が出る度に、「直ちに健康に影響が出るレベルではない」と「冷静に対応」と言っています.

3月21日には高い放射線の下で作業にあたる作業員の被曝について指揮をした人が「直ちに健康に影響ない」と言いました。

なぜ、政府や専門家は「放射線障害を防止する法律や規則」に定められた限度と異なる数値を言っているのでしょうか?

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まず、辞書で「直ちに」を調べて見ると、

1:   間に何も置かないで接しているさま。直接。じかに。「窓は―通りに面している」「その方法が―成功につながるとは限らない」

2:   時間を置かずに行動を起こすさま。すぐ。「通報を受ければ―出動する」

とあります。日常的にも2つの意味でしょう。

一つは「原因と結果」が直接結びついていること、もう一つが「時間的にすぐ」だということです。

だから、「直ちに健康に影響がない」というのは、たとえば1時間に100マイクロシーベルトの被曝をしたときに、政府が言った意味は、

1)   1時間だけそこにいれば一般人の基準値の10分の1だから、この数値だけでは健康に影響があることはない。その家に1日いれば2.4ミリシーベルトになるから基準値を超える、

2)   今日の午後とか明日に病気になるわけではない(時間)、

のどちらかでしょう。

すぐ影響はないという時間的な方は当然です.放射線の障害というのは主に遺伝子障害や白血病、甲状腺ガンなどですから、放射線をあびてからかなりの時間を要します.

だから、放射線をあびてすぐその影響がでるなら、かなりの重症になるでしょう。私が作業を担当している人が「直ちに」と言ったことに心配したのはそのことです。

もしかするとその作業主任の人は、やけどのように、放射線をあびるとすぐ健康に害があると錯覚していたら、作業する人が可哀想と思うからです.

もう一つ、つまり1)も似たようなものです、多くの人はその場所に住んでいるのですから、1時間あたりなどの放射線の強さはあまり意味がありません。

1時間に時間を掛けると、1ヶ月あたりなら7.2ミリシーベルトですから、かなりの放射線をあびることになります。

でも、あくまでも専門家が決めた法律の値は次の通りです(1時間に換算).

     1時間あたり(マイクロシーベルト)

一般人の目安        0.1 (1年が基準)

管理区域の設定の義務    0.6 (3ヶ月が基準)

放射線作業者(男性)限度  5.7 (1年が基準)

放射線作業者(女性)限度  1.4 (3ヶ月が基準)

ですから、10マイクロシーベルト(福島市など)とこれらの値の間を埋めなければなりません。

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日本の官僚(この言葉は中央官庁が編み出した言い方と思います)はそれほど頭が悪くないのです.

「直ちに健康に影響がない」のは確かです.私も同じ意見で、1時間だけあびても、また今日の午後、気分が悪くなるのではないからです。

1時間だけあびるなら10マイクロシーベルトですから、一般人の1ミリシーベルトの100分の1になります.確かに「直ちに」健康には影響がありません。

私と同じ考えですし、法律にもそっています。

つまり、将来、もし健康障害が出たら、「私は「直ちに」と言ったのですよ」といえば良いようになっています。

「放射線が1時間あたりとも言っていますし、勿論、法律も知っていますよ.あなたは「直ちに」という日本語が分からないのですか」と言われれば反論もできません。

つまり、「直ちに・・・」というのは「そこで生活していたら」というのとは日本語が違うのです.

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「冷静に対応」、「決してパニックにならないように」というのもなかなか意味深長です.

10マイクロシーベルトと聞けば、国民は、

「直ちには健康に影響がないが、10日、そこにいると規制値を大きく超えるので、私の家族は待避が必要だ」

というのは実に「冷静な対応」です。パニックでもありません。

この人が20日間、家にいて家族に健康の障害が出たときに、

「あのときに「冷静に対応」と言ったじゃないか!」

と怒鳴り込むと、官僚は落ち着いて、

「ええ、冷静に対応するというのは、放射線の量をお考えになって規制値を超えるまでに移動することですよ」

と言われてしまいます.

官僚とはそういうものです。

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このように考えると、

「規制値を自分で計算して、法律の値にもとづいて考えた方がよい」

という私の考えと、

「直ちに健康に影響はないので、冷静に対応を」

という政府の言っていることは実は同じ!!なのです!!

しかし、混乱しているのは、「直ちに・・・」の後、CTスキャンのような例を出して、法律の規制値を言わなかったり、法律の規制値は「目安であって、健康とは関係がない」と言ってみたりするからでしょう.

それを言っているのは官僚ではなく、官房長官だったり、テレビの専門家だったりします。

3月20日夜、水の汚染について、ある専門家が「飲まない方が良いのですが、それしか水がなければ仕方ありません」と言っていましたが、これはある意味で、正直と思います.

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政府が苦しい言い訳をして、専門家が追従しているのは、予想外の事故が起こり、普段では決してあってはいけないほどの放射線が東北南、関東北を汚染したので、その対応ができないからです。

対応ができないことと健康とは無関係ですから、もう少し誠意のある、わかりやすい表現を使って欲しいものです。

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ちなみに、福島原発の状態を見ると、ここ3日ぐらいで、もしかすると今後の見通しがつくと思います。私が見通しがついたら直ちに書きます.なお、今はまだ東京は大丈夫です。

(平成23321日 8時、執筆)