今回の福島原発の事故でいわゆる専門家の発言がいかにいかがわしいかことがはっきり証明されました。

例えば、福島市の放射線の汚染が1時間当たり20マイクロシーベルトという値がでたとき、専門家は一斉に「レントゲンでは1回で600マイクロシーベルトの被曝をする」などの例を出して20マイクロシーベルがいかに小さい数値で問題でないかのごときにコメントしていました。

しかし20マイクロシーベルトというのは1時間あたりですから、その家に1日いたら(外とほぼ同じ環境で)、それだけで24倍、さらに放射線漏れが1週間続いたら24の7倍ですから168倍になります。

これは、約3.4ミリシーベルトになり、一般人が1年に被爆する限度とされている1ミリシーベルトを遙かに超えます。また1日12時間は別のところにいたり、換気をしない部屋の中にいても1.7ミリシーベルトですから、「安全」とは言えません.

しかも、1年間の限度量などはコメントしている人たちが決めたものですから、無責任きわまりないと思います。

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さて、今回は別の視点からこの問題を見てみます。

福島原発に近い農地で取れたホウレンソウからかなりの量の放射性物質が見つかり食品として不適切かという問題が生じました。

また、1回のレントゲンとかCTスキャンとの比較をして「安全だ」という専門家だけがテレビに登場しました。

しかしCTスキャンというのは医師のもとで行われる医療行為の一つです。医療行為は直接、医師が行う場合と、医師に準じた専門職がやる場合がありますが、いずれにしても、その人の健康状態などを見て監視のもとで行われるのです.

医療行為は通常の意味の「安全」でもなく、「健康に良い」分けではありません。

例えば、医師は必要に応じて足を切断することもあります。足を切断するのが「健康に良い」はずはないのですが、なぜ医師は足を切断するのでしょうか?

それは、医療行為で医師はその人の全てを考えてベストなことをするからです。このままではもっと悪化して命を失うというときには、あるいは医師は悩み、判断し、そして足を切断することもあるわけです。

だからといって、普通の人が足を切断していいというわけではありません。

つまり医療行為の際に被曝する放射線は全く一般と関係がないのです。もちろんCTスキャンをするときには、医師は患者さんを考え、被曝をできるだけ少なくし、その後も患者さんを観察することは欠かせません。

このような医療行為での被曝と福島原発から出た放射線で福島県に住んでいる普通の人に与える影響とは全く違うのです。

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私の経験では、放射線の専門家はこのことを何回も教えられます。

たとえば、放射線の作業をする人はかなりの放射線をあびることが許されますが、その代わりに健康診断もするし、人生を通じて過去にどのくらい被爆したかという記録も提出しなければなりません。

さらに、作業するときには線量計やフィルムをバッチをつけて、一つの作業をした時にどのくらいの被曝をしたかということをしっかりと記録しておきます。

放射線の被曝の危険は、量も問題ですが、同時に被曝した量がわかっているということです。専門家は記録があるということによって安全を保てることを知っています.

福島県発ではメディアを中心として、原発の事故処理に当たっている人たちに対して「大変な放射線を浴びて苦労している」という報道が続きました。もちろんそれ自体は間違っていませんが、作業する人は被曝の量を厳密に計りながら作業をしているのです。

それに対して、福島県の人は被爆も量も分からず、健康診断もしていないのです。

わたくしが放射線の管理者として考えるならば、危ないのは福島原発で復旧作業をしている人よりも福島県に住んでいる普通の人の方が心配です。

放射線と人間の健康というテーマの専門と言われる方々が、これらの基礎的なことを、もう一度思い出し間違ったことを国民に呼びかけないようにして欲しいのです.

このことがあるので、今日の最初のブログに「被曝量を自分で計算しよう」というのを出したのです。

また続いてほうれん草の被曝を取り扱いたいと思います。

(平成23320日 12時 執筆)