大相撲の八百長問題が毎日のようにテレビで新聞を賑わしています。

八百長した力士は新聞記者に取り囲まれ、テレビカメラで撮影され、犯罪人のように辛い毎日を送っていると思います。

このような状態を見るとわたくしは何か強い違和感を感じます。もちろん悪いことは悪いのですから力士が批判されるのは仕方がありませんが、方向が違うように思うからです。

つまり八百長するのも悪いことですが、ウソをつくのも悪いことです。八百長事件が発生したからウソついても良いというわけではありません。

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大相撲の八百長事件でウソをついている人たちの代表が NHK です。

NHK は長く大相撲の放送をほぼ独占的にしていたわけですから、その過程で取材もするし、力士に密着していたはずです。

だから大相撲に八百長があったということは NHK は十分に知っていたと考えられます。日常的な取材をしていても、もし知らないとすればNHKの記者は遊んでいたことになり、それはそれで受信料を返還してもらわなければなりません。

さらに、今から15年ぐらい前に先代の若乃花が「すべての親方とすべての力士を集めて」、「このまま八百長を続けていたら大相撲は滅亡してしまう」と説教したあの大きな会議を知らなかったということはありえません。

私でもよく知っているのですから。

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第二に相撲協会がウソをついているのでしょう。

先代の若乃花の大会議の時、今の相撲協会の親方の大半は力士として若乃花の悲痛な訴えを聞いているはずです.

そして相撲協会の枢要な地位についているのですから、自ら「少なくともあの会議以来、相撲に八百長があることを知っていた。それを放置していた責任は重い」とまずは言うべきです.

それこそ日本人の誠実さ、武士の潔さなどの日本の「伝統」です。大相撲という伝統はそれを一つの形にしたに過ぎません.

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三番目に文部科学省は「取り締まる」というスタンスですが、所轄官庁の文部科学省は八百長を知っていました。それを放置していて今更なにを偉そうな顔をしているのだと思います.文部科学省も「以前から知っていたが、放置していた」と監督官庁としての間違いを認めないと話は進みません.

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NHKや相撲協会、 ばかりではありません。テレビでコメントしている人また相撲の評論家や専門家として登場している人は八百長を知っていたと思います。

もしも八百長が絶対に大相撲として許されないものであるならば、その時点で発言するべきです。そうすればその時に改善されますから、大相撲救うことができたはずです。

つまり大相撲ここまで追い詰めたのは NHK や相撲協会、文部科学省、それに相撲関係者など、相撲で生計を立てていた人たちです。

そして、私たち国民もおおよそは知っていました。

これに対して、力士は比較的正直なように思います。

もちろん八百長はいけませんが、ある力士が「八百長は相撲の文化の一つだと思った」と正直に言っていることもわたくしには納得できることでした。

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つまり、大相撲の八百長騒ぎを見ていると、「知識があって頭が良く、社会的地位のある人」は昔から大相撲に八百長があっていたのを知っていながら、それを口にせずに力士を批判しています。

つまり、自分で嘘をつきながら八百長を批判しているということになります。

一方、力士の方は、八百長が悪かったということも認め、かつ今までも八百長があったということも発言し、そして力士は一生懸命相撲とっているのだということも言っています。

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マスコミは、十両と幕下の待遇の差が八百長を読んだなどと、自らのウソを回避する議論を展開していますが、このような議論は解決を先延ばしにするでしょう。

この際、今までの大相撲には横綱大関も含めて八百長があったと考え、それをNHK、相撲協会、文部科学省、愛好者、そして国民が認めてきたということを素直に言うことが大切だと思います。

(相撲協会よりNHKが悪いというのは、組織は時として腐敗するのですが、その監視役としてNHKに受信料を払っているからです。)

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ウソつかないということは非常に難しいことです。

知識があったり、学問を積んだりすると、誠実に生きるより自分の身を守ろうという心が働き、自分の知識を悪い方向に使うのです.

教育者としての私の悩みはここにあります。学生も教育すればするほど、ウソをついても自分を守ろうとします.

いつの世でもそうですが、素朴で正直な人が馬鹿を見て、知識があり、頭が良く、そして社会的地位の高い人たちが、それを使って自分に不利なことをくぐり抜けて、その人たちが繁栄映する社会には、私は住みたくないのです。

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まったく別のことですが、今回の相撲の八百長についての情報が「捜査中の検察」から提供されたことに注目する必要があります。

これまでどんな事件でも検察は「捜査中の事件に拘わる資料は提供しない」と言ってきました。国民的関心を呼び、すでに中国人船長を本国に帰したあとでも尖閣諸島のビデオを「捜査中の資料」として公開を拒みました。

今回、携帯電話から分かった八百長の記録を相撲協会に渡した検察の意図はなんだったのか? もちろん、良いことですが、それでは今まではなんで拒否してきたのか、検察は説明を必要とします。

(平成23213日 執筆)