2010年の尖閣諸島の事件のあと、中国内地で反日暴動が起きた。

 中国は国境紛争が絶えない。北からロシア、モンゴル、チベット問題、インド、ビルマやタイ、ベトナム、それにフィリピンなどと国境や海で接していて、中国がつねに膨張主義なので、隣国とぶつかる。

 でも、中国で起こる「反**暴動」というのはほとんどが日本を対象にしている。それは日本が中国の一部を占領したことがあるという人がいるが、それなら、ロシア、モンゴルなども同じだが、日本だけに反感が強い.

 このことを普通に考えると、「中国人は日本人を恐れている」ということになるが、それに加えて「あまりに特殊な国、日本」というのがあると筆者は考えている.

 「日本は恐ろしい」という感情は中国もアメリカも持っていて、その対抗心がでるのだと思う. 

 ところで、この暴動を報道した日本のテレビで、「襲われたイトーヨーカ堂は、四川大地震の時に物資を供給するため徹夜で店を片付けて翌日の営業にそなえた。そして2億円の義援金を集めて寄付したのに・・・」と報道していた。

 確かに日本人向けの報道としては良いが、中国を理解するという点では疑問がある。つまり、中国には「恩」という考え方はあまりハッキリしていない。もともと英語では「恩」という単語すらない。「恩」という概念は「日本だけ」と考えておいた方が国際的には良いと思う.

 一体、「恩」という中身は何だろうか?人間は自分の時にならないことをすることがあるだろうか? 自然の中に人間ということを考えると「恩」は「見返りを考えて長期投資する」ということに見えるから、イトーヨーカ堂は単に長期投資の先を間違ったという事に過ぎない。

 筆者は日本人だから「恩」はとても大切と思うが、それは日本が四方を海で囲まれ、単一民族(アイヌやクマソも同一としている)で、天皇陛下をいただいているというまったく特殊な環境にあるからである。

 自分が特殊なのに相手が「普通」だからといって批判するのは問題である.

 中国人の「ウソ」というのは「国」がない民族の当たり前の行為であり、利害関係で全ての行動が決まり、今日、会う人と明日、会うとは限らず、何かを他人にしても、その他人が明日、遠くに行ってしまったら、現実的にその人を追っかけていくことはできない。

 中国では何時も、その日その日なのである。

 2010年の尖閣諸島の領有権について考えてみる.中国の考え方では、

1.   一度でも領有したことがある土地は自分の土地だという中華思想、

2.   尖閣諸島に資源がなければ興味がないが、資源があれば資源が見つかった時から権利を主張するのは当たり前、

ということだ。このような考え方は中国の歴史から来ている。「本来、領土とはどうあるべきか」というのとは違う. これに対して、日本は、

1.   領土というのは歴史的に長く実質支配していたところである、

2.   「公的な手続き」、つまり国際的に尖閣諸島の領有を宣言している、

3.   損得で態度を変えるのは卑怯だ、

という感覚を持っているが、これも日本の歴史と強く関係している.地続きの隣国がある国と回りが海の国の差も大きい.

 だから、意見は合わない.意見を合わせるためには、

1.   お互いの言い分をよく聞く、

2.   お互いの文化の違いをよく聞く、

3.   「正義」を争っているのか、それとも「習慣」、「利権」の問題なのかをハッキリする、

というようなことが必要だろう.

 中国流に言えば、「尖閣諸島は中国と日本の間にあるから、力でその所属を決める必要がある」ということだ。

 歴史的に領土とは、

1.   最初に発見し、

2.   そこにその国の国民がいて、

3.   ある程度、長く住み、

4.   軍事力、政治力、経済力で支配する、

ということが必要だ。

 尖閣諸島は誰が最初に発見したか分からないし、日本人が住んでいた分けでもない。ボンヤリと「琉球の領土」であって、「江戸時代は琉球王朝は中国の属国、明治の終わりから日本の領土」ということだ。

 だから、国際常識に従えば、軍隊が強い方が領有することになる。言い分だけなら決定打がない。

 

ところで、日本人の多く(調査によると94%)が尖閣諸島を欲しがっている.その理由は、

1.   漠然と領土を失いたくない、

2.   千島列島、竹島などの問題があり、尖閣諸島で譲るとどんどん領地が狭くなるかもしれない、

3.   資源がある、

4.   なにしろ中国が憎い、

などである。しかし、日本の政策というのは大きく変化していないだろうか? あれほど日本中が熱して1年も経たないのに、尖閣諸島も、資源も、そして「国家機密」もすでに遠くに行きつつある.歴史的な動きからみると余りに早い世論の関心のようにも思う.

 中国の歴史と考え方はここで一休みして、少し近隣諸国などに目を向けたい。

(平成23120日 執筆)