日本人の年齢分布はかつてピラミッド型だったが、最近、円筒型から逆ピラミッド型になろうとしている.そのために「高齢者の年金が心配だから、少子化を防ごう」という政策まで行われている.

少し基礎的なことを整理しておきたい。

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この図はピラミッド型の分布である。もちろん、基礎的なことを考えるために「典型的な場合」を取り上げているので、実際の分布はピラミッド型でも若干、形が崩れていることもある。

ピラミッド型の特徴は「どの年齢でも死亡数は同じ」ということだ。数学的に表現すると「人口減少の傾きが年齢に依存しない」ということになる。

別の表現では、同じ年に生まれた人は、10歳の時も70歳の時も死ぬ人の数は同じということだ。

また、このような分布で平均寿命を80歳に保つのは難しい。最高齢が100歳とすると、平均寿命は50歳になってしまう。

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それでは余りに情けない.せめて若いときに死ぬ数を減らしたいと希望するのは健全だ。そこで「若いときには死なないで、平均寿命に達したらコロッと死ぬ」という理想的な場合を考えると分布はこのような円柱形になる.

若いときにはほとんど死なずに多くの人が80歳ぐらいまで人生を楽しむことができる。常識的には分布がこのようになるのに反対する人はいないだろう.

「かつてはピラミッド型の分布だったから、お年寄りの年金は大丈夫だったが、今では円筒型の分布になったので、年金を支えるのが大変になった。だから昔のようなピラミッド型が良い」という論理は「健康で長生き」という目標とはまったく相反することがわかる。

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第一のケース:「円筒型の年齢分布であって、若いときに命を落とさず、かつ年金で、若い人に負担をかけない」という状態を作ろうとすると、「若年で死なないのにピラミッド型」が求められるので、お年寄りが増えるに応じて子供を産み続けなければならないので、2030年の日本の人口は4億人という変な計算値が出てくる.

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第二のケース:「若い人の負担を一定にするように、お年寄りが増えたら年金の受給年齢を上げていく」という方法がある。

第三のケース:「65歳で年金をもらい、若い人にも負担をかけない」ということにするためにはお年寄りが早く死ぬことである。

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私があるテレビで、第一も第二も反対意見が出たので、「それじゃ、お年寄りは死ぬしかない」と言ったら「そんなこと、言ってはダメだ」と反撃された。

でも、事実をそのまま直視することはとても大切である.もちろん、お年寄りが早く死ぬような政策をとるのは望ましくない。でも、ある条件ではお年寄りが死ぬしかないのだということはハッキリさせないと、方法が決まらない。

今の日本は、「事実を見る勇気」がないように感じられる.「年金のために子供を増やす」と言っても4億人まで増やすというと、それはできないという.

それじゃ、年金の受給年齢を上げなければならないというと、今度は「お年寄りが可哀想だ」と来る。

回答がないが、「人を傷つけたくない」というのでは、私たちは子供や孫たちにとんでもない社会を残すことになる.

若い頃、健康であることがよいということは「円筒型社会」が来ることを希望しているし、若い人がお年寄りの犠牲になるのも不適切と言っているのだから、私は「その年払いの年金に決めて、働き手に応じて受給年齢を決める以外に方法はない」のではないかと思っている.

「年金のために子供を増やす」など私は賛成しない.人間が子供を作り、育てるというのはもっと崇高なものだ。

私たち大人の責任は事実を見る勇気と、次世代に良い日本を引き継ぐ責任である.もっと現実的で有効な方法が提案されれば良いが、否定だけでは何も産まない。

(平成23118日 執筆)