最近、「税金のムダ使いを無くそう」と盛んに言われます.すでにいわゆる「仕分け」も2年目になり、少しの成果がでる時期です。

そして、もし税金のムダを無くしたら、国家予算が減るはずなのに、90兆円を超える史上最高の予算が審議されようとしています.

国民総生産(GDP)が上昇しているなら、国家予算もある程度、増えるのは妥当ですが、経済政策の失敗からGDPは低下しているなかでの増税(当面は増税せずに赤字で国家を運営する)ですから、このことは慎重に考えなければならないと思います.

実は民主党が進めている「ムダを無くす(仕分け)」というのは、私には一種の「目くらまし」に見えます.

つまり、もともと国家の運営ですから数%のムダは生じるのですが、ムダを排除しているように見せるのが、増税への第一歩と考えているのでしょう.

そして「ムダを排除してもダメだから増税する」というのは、なかなか巧妙な作戦です.

考えてみても、もしムダを排除できても国家予算90兆円の内、1兆円も捻出できません。そして、「あんなに一所懸命やってムダが無くなったからもうやることはない」と言うでしょう.

さらに「ムダを無くしても赤字だから、税金を増やすしかない」とくるはずです.でも実は国家や自治体というのは「いくらでも仕事を増やせる職場」なのです。

普通の会社なら、赤字になる事業はできませんから、なかなか新しい事業を計画することや、今の事業を拡大することは難しく、社長はそれに苦労し、技術者も営業も黒字にする努力を通じて成長します.

ところが、国家や自治体の行う事業の94%が赤字ですから、「赤字の事業をする」という実に簡単なものなのです。

高級官僚や政治家がまるで学校を卒業したばかりの新人のようなことを言うことがありますが、一生、赤字事業だけをしている彼らが成長するのは奇跡とも言えます.

だから、実は「増税をしない」ということは「ムダを省く」のではなく「国や自治体はやらなくても良いことをやらない」という事なのです。このままでは、ここがすり替えられると思います.

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おそらく、これから数年「ムダをなくせ、ムダをなくせ」と政府と評論家が合唱し、そのうち、「ムダは無くなったが、予算が足りない」と言って増税することになると予想しています。

繰り返しますが、国庫や自治体が赤字になるのは「お役所のムダ」ではなく、「やらなくて良いことをしている」からです。国や自治体がやることはすべて赤字なのですから.

そうなると増税を止めるには「何がやらなくて良いか」と言うことになりますし、それには議論が必要です.

ところが、五箇条のご誓文にあるように、国政とか自治体のように「公的」なことは「万機公論に決すべし」で、個人的に儲かるというようなことを議論してはいけないのですが、かつて国会は「族議員の抵抗が激しい」、霞ヶ関(中央官僚)は「省益」と言わたように、残念ながら「万機公論に決さない」ということを公に認めていたのです。

「政治に金がいる」というのも同じです.

少しでも「個人的利益」の臭いがすることは徹底的に追求するぐらいの厳しさ日本社会に生まれないと、これまで続いた国家レベルのトリック(年金、貯蓄、健康、人の和、環境など)のようにまた痛手を被るでしょう.

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大人は自分で考え、選挙権を持っていますが、子供やこれから日本に生まれる人は自分の将来を決められません.民主党政権はひどい状態で、いかに日本の産業がシッカリした基盤を持っていると言っても、このまましばらく続いたら崩壊する危険性すらあると思います.

(平成23117日 執筆)