ベトナムの通貨、ドンは崩壊している.かつてベトナムに行ったときに残っていた1000ドンを「なにかの役に立つだろう」と思って持って行ったら、紙幣1枚で5円という。

ドンのインフレは続き、少し前の紙幣はその価値を落としている.実際、日本円の5000円を両替すると、まず「1ミリオン・ドン」を渡され、さらに少し紙幣を出してくれる.

「ミリオン」と聞くと億万長者になった気持ちになるが、120万ドンといっても5000円である.

こんな状態だから、ベトナムの人も「ドン」という通貨は「日常生活」にしか使わない。つまり「物々交換」の代わりに毎日の交換に使っているだけだ。

少し長く「価値のあるもの」を求めようとすると、自国の通貨ではなく、まずはドルに換え、そして金を保有する.ドルや金にしておけば価値はほぼ下がらないと考えられている。

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町中はオートバイで溢れていて、みんな顔が輝いている.恋人同士は後ろの彼女を乗せ、彼女の腕はシッカリと前の彼を抱いている.

家族は3人、4人で1台のバイクに乗り、笑顔で私に答えてくれる.

10年前、ほとんどの人は着の身着のままで、粗末な家に住み、移動手段も無く、まして町のレストランで飲むなどと言うことは夢のまた夢だった。

でも、今は、少しのお金を貯めてバイクを買い、冷蔵庫を手に入れ、そしてたまにはレストランにもいけるようになった。

希望が顔を輝かせている.「昨日より今日、今日より明日」が良くなることに確信がある。だから、お金を金に換えることがあっても、基本的には「その日暮らし」である。

家族の紐帯は強い.貧しいから家族が団結して心を一つにしなければならない。そこに愛が生まれ、いたわりの心が育っている。

それも「明日は今日より良くなる.だから明日にお金を繰り越さなくてもよい」という信念が支えている。

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崩壊した通貨と明るい市民・・・それがホーチミン市に溢れている.「実質経済が良ければ通貨は崩壊して良い」というのはブラジル以来だろう.

リーマンショックなど、私たちの生活は「幻としての通貨」に振り回されているが、ベトナムでは「通貨は実質ではない.引っ込んでろ!」と言われている.

町を元気に走り回るバイクを、それに乗っている人たちを見ると、人間社会でもっとも大切なのは、「夢と希望」であって、「お金、年金」などではないことを教えてくれる.

日本の将来も明るい.でも、それは単純ではないから、ハッキリしたイメージで示さなければならない。それが日本の指導者の大切な仕事でもある.

(平成221227日 執筆)