戦後間もないころ、あるリコールの署名問題で、「署名の有効性」が裁判になり、名古屋高裁が判決を出したことがある。とにかく戦後間もないので、判決文の中には次のような文言すらある.

「今や我が国は二十歳以上の男子のみならず、婦人に対しても選挙権を認めているのであるから選挙投票と性質を同じくする解散請求の署名捺印も各人が独自の意志に基づき表示せらるべく・・・」

まだ婦人参政権が認められた直後だから、こんな事も確認しなければならなかったと思うと隔世の感がある。そんな時代だった.

(昭和23年(ナ)第2号、第3号事件。名古屋高裁判決)

それでも、名古屋高裁はリコールの「署名」について、

「署名が自署なることを要するというのはただ氏名だけに関することであり、その他の記載例えば住所生年月日などは本人の自署を要するものではないと解するを相当とする。」

としている。つまり、リコールで「署名」を求めるような場合、署名こそが問題で、住所などは照合のための参考になるものに過ぎないとしている。

つまり昭和23年だから、今からおおよそ60年前にすでに「署名」は「署名」だけが大切でその他のものは参考に過ぎないとしている。

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これに対して、平成22年9月30日午後3時15分に、日本国名古屋市で開かれた名古屋市選管委員室で、郡司委員(選管)は「住所、氏名、生年月日について、一字でも一致しない場合は無効である」と主張した。

その結果、まるでおとぎ話のような滑稽な審査が現代の名古屋市で行われたのである.

1)   「公団**団地」と書くべきところを、略称で「UR**団地」と書いた人は「略称は認められない」として無効になった?!(選挙管理委員会を選管と言ってもOKなのに?!)

2)   同居家族が、続けて署名して住所がおなじなので、「〃」という記号を使ったら無効になった?!

3)   書きはじめたらボールペンの出が悪く、署名の近くで2ミリほど線を引いた場合は無効になった?!

4)   住所などは合致しているのに、選挙人名簿に記載されている名前はひらがななのに、署名は漢字で書いたのは無効になった?!

5)   選管が個人宛に送った「調査票」に分からないところがあったので「○」をつけなかったので無効になった?!

いずれも、えっ?!と驚くような内容だが実際に行われたことだ。現代のこの日本に「こんなことがあるのか?!」とビックリするような内容である。

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名古屋選管は民主主義がとても憎いのだろう.自分たちより劣る市民がなにを言うのか!という感じがする.

若干の関連した裁判の判決を紹介しておく.一つは昭和28年の福島地裁の判決だが、

「(住所などは当然だが、たとえ)署名(氏名)に誤字があっても、直にこれを無効とすべきではなく、署名簿の他の記載等と総合して当該署名が何人の表示であるかにを推認できる限り、これを有効な署名とするのが相当である.」

とある。名古屋市選管は事務サイドからの情報提供で、このことも「知っていた」のである。選管は悪質な故意犯だ。

また、昭和29年の神戸地裁の判決では、

「署名簿の署名が選挙人名簿の記載と相違していても、それが名簿に登載さられた者の表示であると認められる限り、これを有効と解するのを相当とする」

さらに、平成22年の千葉地裁の判決では、戦後、かなり時間が経過していることもあり、踏み込んだ解釈を示している.

「住民の意思をできるだけ損なわないように解されるべきであり、この見地に立って考察すると、些末な手続き違反によって直ちに同手続によって得られた署名を無効とすべきではなく

としている。これももちろん名古屋選管は知っていた(議事録には事務方が必死に委員に情報を提供している)。

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これらの判例と、名古屋選管の無効判定はまったく異なり、「違法であることを承知で、法律違反をして、署名の効果を失わせた」という民主主義ではもっとも重要な罪を、こともあろうに選挙管理委員会が行ったのである.

今回のリコールが市議会の解散を求めたのであり、選挙管理委員会の4名の委員の内、3名が元市議の天下りであった。つまり元議員が現在の議員を守ろうとしたのである.

そして、仕事の無いときでも報酬を受け取っていたことも明らかになった。天下りはする、税金は不当に受け取る、そして民主主義を壊すというとんでもない人たちだ。

実に情けない。これから、他の国で「選挙の不正」が起こっても、それを名古屋市民は笑うことはできなくなった。哀しいことである.早く検察は選挙管理委員を逮捕してもらいたい.

些細な暴力事件も社会の安寧秩序を守るには大切ではあるが、民主主義を揺るがす犯罪を放置していてはいけない。マスコミもなにをやっているのだろう.こんな事が続いたら日本は崩壊する。

(平成221210日 執筆)