アメリカがイラクを侵略し、イラク戦争が起こったとき、日本の報道は戦争の様子を微に入り細に入り、報道しました。

「戦争の現場がこれほど詳細に報道されたことはない」とも言われるぐらい、茶の間のテレビに、狙い撃ちするアメリカのミサイルがイラクの建物を破壊し、爆発が起こる有様が映ったのです。

実際の戦争の事実を報道するのは興味本位ではない。国民が事実を知るために大切なことだとマスコミはいったものです。

イラク戦争に比較してみると、尖閣諸島で起こった中国船の事件は、日本の領海で起こったことでもあり、「残虐な内容」もほとんどなく、たまたまその領海に日本人がいたら、その一部始終をいとも簡単に見ることができたでしょう.

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日本国憲法では「表現の自由(報道の自由)」が明記されていますが、近代国家の歴史からの教訓や、明治憲法で表現の自由がハッキリしていなかったことも戦争の一因になったという反省から、報道の自由は国民の大切な権利として認められたのです.

そして、その報道の自由を実際に確保するために、「国民が政府に納める税金を、政府を通して与える」のではなく、「国民が直接、受信料を支払い、放送局を持つ」という「国民主体の報道機関」として「NHK」を(国民が)作りました。

NHKは政府のものではなく、報道の自由を守る国民(受信料を払う人たち)の組合です.

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尖閣ビデオは海上保安庁の一保安官が入手できるものだったことから、NHKの記者は必ず手に入れていたでしょう.

なぜ、それをNHKは報道しなかったのでしょうか?

今のところ、NHKから「なぜ報道しなかったのか」について視聴者に説明がないので推定ですが、おそらく「政府の方針があるから」ということでしょう。

でも、NHKというのはもともと「政府が隠すものを暴く」という役割が中心で、国民は受信料を払っているのであり、紅白歌合戦のためではないのです.

紅白歌合戦のような娯楽も大切ですが、それは民放でも十分にできることで、NHKに取っては「報道」の合間に楽しい番組も組むという程度なのです。

「政府が尖閣ビデオを隠すから報道しない」というのでは、報道の自由は要りません.報道の自由を憲法に書かなければならないのは「政府が隠すビデオを暴露する」からこそ、その時にNHKが逮捕されたりしないためです.

尖閣ビデオの問題が今後、どのように発展するか不明ですが、報道の自由を持ち、国民からお金を徴収し、ビデオを暴露しても逮捕されないNHKが報道せず、その代わりにとビデオをネットに流した人が逮捕されたら、いったい「報道の自由」は何のためにあるのでしょうか??

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この事件が起こっているときに、ビルマの軍事政権で選挙が行われ、外国人記者の入国が(ビルマ政府によって)禁止されました。そこに日本人「ジャーナリスト」が国境から侵入しようとして拘束されたというニュースが流れました。

普段なら「政府が禁止することを勇敢に暴露しようとした記者」ということで英雄扱いする日本の報道も尖閣の問題で自分たちが隠したので、ほとんど報道されませんでした。

でも、その時の記者のコメント、

「禁止されればされるほど、我々ジャーナリストは知ろうとするものだ」

という趣旨のコメントをそのままNHKに返し、もしNHKが尖閣ビデオの報道を規制した理由を説明しなければ受信者としてNHKを直ちに廃業させたいと思います.

(平成221113日 執筆)