(タバコについては多くのお医者さんから「喫煙は危険」というアドバイスをいただいています。それも含めてもう少し検討させてください。今回は「愚行権」の続きです.)
私はタバコを吸わないけれど、禁煙運動には次の二つのなぞがあるように感じられる。
1) タバコは人間の「健康」には害があっても、「幸福」に害をなすか?
2) 人間には「愚行」は不要か?
禁煙運動を熱心にしている人には悪いのだが、私は学問や論理としてタバコについて検討しているので、最初から結論は出していない.
また「人に何かを説得したり、強制したりする」時には十分に考え、慎重でなければならないのも当然と思っている。
つまり、自分がタバコを止めるのは別に問題は無い.自分の人生は自分が決めれば良いからである.ただ、禁煙運動というのは他人の自由を束縛する.だから慎重さが必要だと私は思う。
単に「私はタバコは嫌いだ!だから止めてくれ」というのは大丈夫だろうか? 憲法の言う基本的人権の軽視や、増税の口実にされる危険性がないだろうか?
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「タバコを考える」のパート10では「愚行」というものを考えてみたい。
「愚行」という定義は、倫理学で使用されるが、「やらなくても生きていける行為で、やや愚かに見える」というものである。
たとえば、「冬山登山」が愚行の典型だ。
寒い冬に家の暖炉の前でミカンを食べたり、本を読んでいれば良いのに、わざわざ、寒いところに出かけて、遭難の危険を冒し、お金を損して、遭難すると人に多大の迷惑をかけ、時によっては自然を破壊する。
「冬山登山」はまさに「愚行」である。なにを考えているのだろうか、まさに狂気の沙汰だと言ってもそれほど間違ってはいない。
でも、冬山が好きな人は多い.人格も高い人が多く、その人に「好きだから、愚行をやって良いのか?」とも聞きづらい。
そこで、「なぜ、冬の山に登るのか?」と聞いてみると「そこに山があるから」と答えた。これがあまりに名言なので、一発で冬山登山は「愚行だけれど免責する」ということになった。
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「冬山登山」の次にすぐ「喫煙」を出したいのだが、少し距離があるので、角度の違う反論があるかも知れない.そこで、「しおから」を考えてみたい。
「しおから」は辛い。「塩辛」というぐらいだ。
塩をたっぷり使ってイカなどをつけ込む.こくがあって実に美味しい.特に熱いご飯には欠かせない人もいるだろう.
少し冗談めかして言うと次のようになるだろう。
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「しおから」は日本に蔓延した。実にケシカラン!
だいたい、戦後のアメリカの研究で「塩分を取ると高血圧になる」という事を知らないのか!
だいたい、塩分の取りすぎが体に悪いことを知っている人が、平気で「しおから」を買うのだからケシカラン!
自分の健康をどう思っているのだ!
それに、「しおから」は他人を痛めているのが分からないのか!
お土産で売っていたり、食卓の上にしおからがあると、つい誰でも手を出したくなる!あれほど美味しいものを出しておいて「我慢しろ」とはどういうことだ!
「しおから」は高血圧の元になるし、他人に塩辛いものを食べさせて他人の健康まで痛めることがわからないのか!
だから、即刻、「しおから」を販売禁止にするべきだ。
そういえば、「しおから」だけではない。「ケーキ」も禁止すべきだ。だいたい、政府がメタボ対策で膨大な税金を使っているのに「甘いものが好き」だと! ケーキは和菓子よりカロリーが高い.
メタボになるものは全てダメだ。メタボのために医療費がパンクしそうなのを知らないのか!
「しおから」を食べるのも「ケーキ」を売っている店も、全部、禁止だ! 愚行を許すな!! 「ケーキ」に税金をかけてすべて1000円にしろ!
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つまり「健康に悪い」とか、「他人に少しの迷惑をかける」という理由で社会から排斥できるとすると、喫煙ばかりではなく、多くのことが標的になる.
だから、私には禁煙運動というのは実に奇妙なもののように思える.「禁煙運動に熱心な方、あなたはまさかお酒を飲んではいないでしょうね」と少し意地悪に聞きたくなる。つまり、
お酒は嗜好品=タバコも嗜好品。
お酒は肝臓を痛め=タバコは肺を痛める。
お酒は飲酒運転=タバコは副流煙(おそらく間違い)
お酒くさい!!=たばこ臭い!!
酔っぱらってフラフラするな!=タバコの灰を捨てるな!
酒乱の人がいる**タバコ乱の人はいない(タバコに軍配)。
タバコの方が迷惑度は低いように見えるが・・・
「愚行」と言うけれど、人間には「愚行」はいらないのだろうか。そして、タバコは「副流煙問題」が知られなかった以前から禁煙運動が盛んだったが、冬山登山、塩辛、ケーキ、そしてお酒と違うという確固たる論拠はあったのだろうか?
(平成22年10月30日 執筆)