あるテレビで母親と父親の役割について話になった。
「母親に育てられた子供の成績は良い」
「「ねんね」などの幼児語に対して父親の脳は反応しないけれど、母親は反応する」
「イルカは少しの言葉を交わすが、子供は母親とは通じるが、父親とは言葉が通じない」
「母親の脳は出産すると変化する」
など、父親と母親の違いを強調する発言が続いた。いずれも生物としての女性と男性の違いだから、事実は事実だ。
でも、現代の男女の問題は「生物学的に異なる特性を持つ男女が、どのように人間の社会活動を行うか」ということにある。とかく、生物学的に男女が違うのだから、社会的にも違わなければならない」と結論を急ぐ人たちがいる.
それに対して、何でもかんでも男女は同じだと強調するグループもいる。その極端な例が「ブレンダの悲劇」であり、もともと男の子が性器を事故で失って女の子として育てられた。
ブレンダは14才で自分が男の心を持つことを知り、いろいろな紆余曲折のあと、自殺した。
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その話の出た番組は「嫁さんが、家の中を片付けない」という事だったので、男女の差を強調する発言が続く中で、私は次のように発言した。
「解決策は簡単ですよ。嫁さんが外で働いて、あなたは家で家事をしたらどうですか?」
言われたタレントの方はきょとんとしていたが、男女の性差と社会的な役割は違う.だから、生物学的な差異をあまり極端に強調することは無理なのだ。
でも、主婦が主夫に変わったとき、子供の成育(脳の発達や言語能力など)が悪い方に行く可能性はある。社会と生物が調和しないこともあり得ることも知っておかなければならない。
動物でオスが子供を育てる場合もないではないが、きわめて特殊なケースで、ほとんどの動物はメスが子供を育てる.その不文律を人間の頭で破るのだから、それなりの準備はいる.
でも、そのテレビでの相談の場合は家の中は綺麗になるので、その人の悩みは解決される。繰り返すが、主婦が主夫に変わったときの子供への影響はまだ断片的にしか分かっていない。だからといって、親の事情で子供に被害を与えてはいけない。
子供も親と同じ権利を有するからだ。
その意味で、番組自体はわかりやすかったが、そこで議論されたことは深かった。そしてそれをテレビ局の編集がよく分かっていたのも映像で理解でき、とても快適だった。
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草食性男子と言われるように、たった60年だけ戦争が無かっただけで、男女の関係は変わっていく.これまで数1000年、戦争に明け暮れた社会が、平和になって、まだ私たちは生物学的にも社会学的にも、また哲学的にも、「よりよい男女の関係」すら分からないでいる.
(平成22年10月21日 執筆)