世界に60億人以上が生活していると、ニュースには事欠かないし、考えなければならないことが多い。尖閣諸島事件で正しく判断しようとして歴史を勉強していたら、インフルエンザの方も結構、大切な時期になってきた。

もっとも重要なグラフはインフルエンザの流行の状態を示すこのグラフである。

すでに2,3回、引用してきたので若干、なじみが出てきた。このグラフが教えることは、

1)   昨年の新型インフルエンザは5月ごろから第一流行、10月ごろから第二流行があった。

2)   その結果、毎年、流行していた「季節性インフルエンザ」が2010年には患者さんが出なかった。これは驚くべきことである。

3)   ウィルス学の教えるところによると、「非流行期にインフルエンザが潜んでいるところ」が新型インフルエンザに占領されたと考えられる.つまり、インフルエンザは「流行しているときには人の体」にいることができるが、流行していないときに人の体にいると、人の防御機構のために全滅してしまうので、どこかに潜んでいる(まだ分かっていない)。

4)   マスコミは流行している時だけ報道するので、判断が混乱する.

 今年は10月末になっても新型インフルエンザが流行しない。つまり「昨年と同じようになる」という可能性は減ってきた。その原因は、

1)   新型インフルエンザがすでに力を失ったのか、

2)   新型インフルエンザが1月頃から流行する季節性インフルエンザの一種に変わったのか、

と考えられる.

厚生労働省は2010年のインフルエンザの対策を検討し、10月から12月末までワクチン接種をすることを決めたが、報道はほとんど扱っていない。

あれ程、騒いだのに・・・と思わないでもないが、それがマスコミだから我々で勉強しなければならない。

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まず、新型インフルエンザというのはどういうものだったのかというと、日本で患者さんの数が2000万人、死者200人である。死者200人というのは過去最低に近く、普通は1000人ぐらいだから、新型インフルエンザは「普通のインフルエンザ程度の病気で、弱い方」と言うことになるだろう.

(推定されるインフルエンザの死者は毎年、1万人程度と見られている.普通はあまり騒がれないので、インフルエンザが元で「別の病気で亡くなる」人が10倍ぐらいいると厚生労働省は発表してきたが、新型についてはまだ数字が出ていない。

私は「あれほど騒がれたので、新型インフルエンザの死者は本当に200名ぐらいだった」のではないかと推定している.でもあまりこの議論を深める必要は無い。いずれにしても2009年に流行した新型インフルエンザは毒性の弱いウィルスだった。)

次に新型インフルエンザについてのワクチンの効果だが、まだハッキリしていない。

これまでのインフルエンザは年配者に多かったが、新型は若年層に流行した。アメリカではワクチンの効果が詳しく調べられているが、日本では三重の研究者が文部省の研究費で調べているだけで、65才以上の人で季節性インフルエンザの場合、ワクチンの効果は25%ぐらいの人に有効であるとされている。

だから、若年層についてワクチンの有効性はわからない(国民には)という状態である.

新型インフルエンザが日本でたいした事にならなかったので、「ワクチン接種やタミフルの防御態勢が有効だった」という言い訳のような話もあるが、もともとインフルエンザワクチンはそれほど有効ではなく、また副作用もある。

だから、接種に当たっては個人個人が十分に判断することが必要だろう.国もワクチンの有効性が低いことをよく知っているのだから、「国民がワクチンの接種を希望したらできるようにしておく」ぐらいが良いと思う.

10月1日から12月31日までワクチン接種が行われているが、新型だけと、新型季節性両方のインフルエンザに有効なワクチンが用意されている.

昔に比べると国立感染症センターなどからかなりのデータが提供されるようになったが、まだ「お役所仕事」の域を出ていない。特に厚生労働省からの情報発信が著しく弱く、国民が自主的に判断するためのデータでなく、お役所の責任逃れを主とした情報発信にとどまっている.

ワクチン接種が始まったので、とりあえず考えてみたが、もう一度、さらにインフルエンザ問題の深部を探ってみたい.

私は3種混合のインフルエンザのワクチンを打ってみたいと思う.その目的は自分のためというより、ワクチンの研究を進めるためにはある程度、ワクチンを接種した人がいないとデータが取れないから、年配者のデータのために接種を受けたいと思っている.

ワクチンを打ってから効果がでるのが2週間、そして5ヶ月持続するとされているので、10月末ぐらいに接種してみたいと思っている.

(平成221021日 執筆)

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