(この記事は超・楽観論の訓練講座として書かれています)
どんなものにも、「良いところ」と「悪い点」があるものです。
人間も10の性質の内には1つや2つはあまり感心しないところもあり、本人もそれに気がついているのですが、なかなか直せないものです。
むしろ、「欠点ゼロ」という人は情緒が不安定だったり、表面的にはよく見えても、とても冷たい人だったなどということもあります。
だから、100のうち、10ぐらいは悪い点があっても、それがあまり極端な場合を除いて、「ああ、そんなことぐらいある」ということで済ませたいものです。
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ある中学校で「環境」の講演をしたときでした。
もちろん、中学校で講演するのですから、「リサイクル」とか「温暖化」の話をするのではなく、200年前ぐらいからの科学技術、社会の進歩と自然や環境との関係をお話ししました。
講演がおわって生徒会長が「答礼」をしてくれるというので、壇上から下に降りて、3年生の男子生徒の前に行きました。
その生徒会長は「今日は先生から・・・」と話し始めましたが、実に要領よく、私の言いたいことをまとめてくれました。事前に何も渡していないので、彼が自分で聞いてまとめたものですから、とてもシッカリしていて嬉しくなりました。
そして最後に、
「ボクはこれまで科学技術は人間に対して悪いことばかりをしてきたと思っていましたが、先生のお話を聞いて、良いことも悪いこともするのだということが分かりました。」
と締めくくりました。
姿勢や話し方も立派、内容もあまりにも素晴らしいので、感心するとともに、この利発な子供が「科学技術は100%悪いことをした」と思っていたことにビックリしたのです.
おそらく、「環境を悪くした、大量生産した、兵器を作った、大事故が多くなった」など科学技術や社会の「進歩」の悪い面を学校やマスコミに教えられたのでしょう.
そういえば、私たち大人は「良いことがあってもマスコミは報道しない」ということを知っているので、毎日、暗いニュースだけでも聞いてられるのですが、社会全体をあまり知らない子供たちから見れば、世の中はみんな悪いことをする人、明日にもゴミがあふれたり、温暖化で地獄のようになってしまうと思うのも無理はありません。
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かつて、身を切るような寒さに震え、かじかんだアカギレの手で冷たい水で洗濯をし、高熱を出した子供をおぶって1時間も病院に走った日々・・・
底の抜けそうなくみ取り便所、やや腐って糸を引くお米をなんとかごまかして食べた日々、冷蔵庫がないので頻繁に食中毒で死んでいく同級生の葬式・・・
そんなこともわずか80年ですっかり無くなってしまいました。平均寿命は40才から80才になり、戦争も無くなり、本当に良い社会になりました。
その全てが科学技術の恩恵ではありませんが、科学技術も100のうちに10ぐらいはまずい点があったり、また使いすぎたりしたことも事実です.
でも、今はそれもほとんど修正されて、空はきれい、水道も安心して飲むことができ、スーパーには食品があふれています.
そんな素晴らしい日本でもっとも大切なことは、若い人が将来に夢を持って明るく発展した日本を作ってくれることです。その若い人が「100のうち10の悪いこと」だけに注目して、科学技術そのものを否定することはどうなのでしょうか?
「角を矯めてウシを殺す」
小さな欠点を直そうと必死になって、全体をダメにするという故事ですが、この頃、日本人の潔癖なところが悪い方向に行っているような気がします.
(平成22年9月23日 執筆)