アパートの一室で大麻を育てていたということで、多くの若者が逮捕され、それをテレビが大々的に報道しています.

テレビの記者が大麻と大麻取締法についてほとんど知識を持っていない状態で、ただ、社会におもねる報道をしたいという気持ちが先立ち、アパートで大麻を育てただけなのに「極悪人」のように報道しています.

大麻は2000年以上も日本には多く自生していて、今でも至る所で大麻が見られます.なにしろ先の戦争の前は日本政府が積極的に「大麻の栽培」を奨励していたぐらいですから.

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(私が撮影したそこら辺にある大麻。許可を受けて栽培しているが、それでも白昼堂々と大麻は日本の大地に育っている。)

ところが戦争に負けて日本人が誇りを持てなくなり、昭和23年にGHQ(占領軍)が定めた大麻取締法を今でも金科玉条のように大切にして、テレビはまるで大麻が悪いことのように報道している.

すこしは「日本史」を勉強し、「大麻畑」を見て欲しいものである。

ところで、一昨年ごろから「大麻で逮捕」という報道がいっそう、目立つようになった。

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事実、この図に示すように大麻に関する警察の検挙数はかなり高くなっていて、多くの人は「最近、大麻について社会がルーズになっているのではないか」との不安に駆られている.

しかし、いくら法律があるからといっても、まったく精神的な効果のない産業用大麻や、精神的な効果を示す成分が少ない大麻が多いのに、「大麻は悪い」といういうことだけを強調するのは科学を知っている国とは思えない取り締まりの仕方である.

検挙数の増加の原因はおそらく、「大麻に接する人が多くなった」のではなく、「警察が欠陥のある法律を積極的に使うようになった」のではないかと危惧している.

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「大麻」は読んで字のごとく「痲薬」でもなんでもなく、単なる「植物」である。一方、「痲薬」というのは「薬」だから、アヘン、コカイン、ヘロイン、アルコール、ニコチンなど精神的に作用する「薬=化学物質」でなければならないのは当然だ。

その意味では大麻の中に少量含まれている「テトラヒドロカンナビノール」を取り締まるならまだしも、麻の一種である大麻を取り締まっても意味がない。

科学的に矛盾した法律や取り締まりは、アウトローの発生を生むというのは歴史的によく知られている.法治国家では国民は法律を遵守しなければならないが、科学的に間違っている法律を作って、それを強制することはできない。

「大麻」の「麻」は「あさ」であり、「痲薬」の「痲」は「しびれる」という字である。警察は「麻」と「痲」の区別がつかないと言っているのだろうが、それは「権力の行き過ぎ」というものである。

法治国家も、民主主義も、その根幹には「国民の常識、科学的合理性」が満たされていることが前提だ.

そういえば、資源を余計に使い、結局は焼却しているゴミの分別で、「分別しない人はゴミを出してはいけない」という自治体が現実にでるのもこのような曖昧で歴史や科学を軽視する風潮なのだろう.

(平成22825日 執筆)
参考:武田邦彦「大麻ヒステリー」(光文社)