新型インフルエンザがいよいよ「運命の時」を迎えようとしている.事実をまず確認しておこう.

201008

この図は国立感染症センターが定期的に出しているインフルエンザの流行の図であり、横軸は「週」。だから1年で53週ある.

縦軸は「特定の診療所を訪れた患者数」で、これで毎年、感染症の流行状態を見ている.

新型インフルエンザについては、少し見にくいが細い薄いブルーの色の線で、2009年の5月ごろ、一度、流行し、その後、いったん流行は収まったが、まさに8月下旬から患者が発生し、10月から11月にピークを示している.

新型インフルエンザの2009年の線は細いけれど、秋に流行したインフルエンザとしては2009年だけなので、グラフを見るとすぐ分かる.

つまり、これまで日本で定期的に流行してきたいわゆる季節性インフルエンザは1月から3月ごろ流行すると決まっていた。受験期にインフルエンザにかかって多くの受験生が泣いたものである。

ところが、驚くのはグラフの赤い太い線で、これが2010年のインフルエンザの患者さんの総数、つまり新型も季節性も両方入っているが、調べてみると、季節性の患者さんはほとんどゼロだった。

つまり、新型インフルエンザだけは秋に流行し、新型が流行したので、季節性のインフルエンザは結局、流行しなかった!!

おどろくべき朗報だ!!

全体的には「新型インフルエンザが流行して、免疫ができたので、季節性インフルエンザが流行しなかった」か、あるいは「新型インフルエンザと季節性インフルエンザのウィルス同士が闘い、季節性インフルエンザが敗北したので、流行しなかった」か、どちらかである。

また、まだ統計はシッカリしていないが、季節性インフルエンザでは毎年1万人ぐらいの人が死ぬが、新型インフルエンザの死者は200人とされている。

私は、統計の採り方の問題があるから、新型インフルエンザの死者はもう少し多かったかも知れないと考えているが、それでも季節性インフルエンザより新型の方がかなり安全であることが分かる.
(最初の患者さんがでたかと騒がれた高等学校の校長先生の涙はなんだったのか? マスコミも騒ぎすぎではないか.過ぎたるは及ばざるがごとし)

そして新型が流行すると季節性が流行しないと言うことになると、これほど良いことはない。

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その時期がいよいよ、迫ってきた。

この時期にこそ、厚生労働省、インフルエンザ研究者、国立感染症センターなどの関係の専門家が「一斉に声を上げ」、国民に何らかのメッセージを出す時期だ。

昨年の流行から見ると、もうすぐ新型インフルエンザの患者さんが出現するはずなので、もし「予防」するなら今がもっとも大きなチャンスだ。

このような感染症が頭を持ち上げてくるとき、どのような対策がひつようか、テレビや新聞は毎日のように報道して欲しい.

「流行が迫ってきたから、注意が必要」とか、

「今年は秋は流行しない」とか、

「予防のためにワクチンを打て」とか。
(ワクチンの有効性については疑問も呈されているが)

専門家としての判断を示すべき時である。

流行がある程度、進んでから解説をするだけでは「インフルエンザウィルス学」というのは無いことになるので、流行しても発言できないはずだからである.

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ところで、ヨーロッパではWHOの首脳部が薬品会社(ワクチン、タミフル)から巨額なリベートをもらって新型インフルエンザの危険をあおったという疑惑で調査が行われた.

2009年にあれほど騒いだ新型インフルエンザだから、1年経って流行の季節を迎えたのだから、この行く末はとても重要である.

少しこの状態を見て、いったい、新型インフルエンザはなんだったのか、パンデミックとはなにか、そして今後、どのように注意が必要かを数ヶ月後には考えることができると思う.

(平成2289日 執筆)