もともと、ツバルというサンゴ礁の島は、数10㌢ぐらい海水面が上がったからと言って、沈むものなのだろうか? さらにどういう理由で「サンゴ礁が島になっているのか?」ということを考えて置かなければならない。
サンゴというのはもともと動物で、共生関係もあるけれど、海の中の植物(プランクトンなど)を食べなければ生きていくことはできない。
つまり、サンゴは空気中に出ると「餓死する」のだ。空気中にでると餓死する生物でできた島(サンゴの島)が海の上に出ているはずもない。
事実,19世紀の終わりにイギリスがツバルを信託統治にしたときにはほぼ「海の下」の島だった。干潮時にはかろうじて海の上に顔を出すが、満潮時になると沈む、そんな島だった。
それが20世紀の半ばに起こった第2次世界大戦の時に、日本軍を攻めていたアメリカ軍がツバルを占領して、1500㍍の飛行場と施設を作った。その時に本格的に埋め立てられて,現在の島になったのだ。
だから、そもそも現在のツバルは人工的な島で、そこに住民が住み着いて1978年に独立した。
でも、アメリカ軍の施設が作られて60年をたち、一部が波に浸食されている、そういう状態である。
島の全部が沈んでいるなどということではなく、日本に台風が来て一部の家屋が浸水するように,ツバルも波で土壌が流出しているところが傷んでいるだけだ。
実は、日本のテレビや新聞のカメラマンは,ツバルにいって「ツバルは沈んでいない」ということは判っていたのに,浸水しているところだけを写してきた。
なんというカメラマンなのだろうか!カメラマンには職業的な倫理観はないのだろうか?
「自然を守る」とか、「現代はあまりに人工的で行きすぎている」というような考え方から言えば、ツバルは「戦争の時に自然を破壊したが、それが元に戻っている」ということでもある。
「自然派」はもしツバルが沈めば歓迎するはずだ。
先に引用した「ニューサイエンティスト」の論文では、今後、海水面が上がっても,ツバルのような島が沈むことはないと書いている。
つまり、すでに島の面積が拡がっているのは、「死骸となったサンゴが波などによって陸地に押し上げられ、積み重なった結果」であって、「今後もサンゴが増えれば、ずっと陸地を作る材料が得られる」ということである。
たとえば、1972年のハリケーンで、140ヘクタールものサンゴの死骸がたまり、島の面積は10%も拡大した。
もともとサンゴというのは動物で海の中に住んでいるのだから、サンゴが死んでも、じっとその場所にいれば、もともと「サンゴ礁でできた島」などというものができるはずもない。
太平洋は深さが4000メートルもあるのだから、そこにはサンゴは住めないが、火山や地殻変動で島ができるとその周辺の浅瀬にサンゴが繁殖し、それがなにかのことで隆起したりすると、そこが「サンゴ礁の島」になる。
だから、「島ができるのだから、島も増える」のが当然であり、「海水面のギリギリまでサンゴが繁殖するのだから、海水面が上がれば、それだけサンゴの高さも高くなる」というのも、また当然である。
さらにもう少し、根本に遡ろう。
もともと、地球上にある多くのものがCO2でできていたり、CO2が分解してできた酸素(O2)を使って生成したものだが、サンゴという動物もすっかりCO2でできている。
まずサンゴの外側の体・・・サンゴが死ぬと殻が積み重なってサンゴ礁になる・・・は、カルシウムとCO2が結合してできるもので、海に融けているCO2はサンゴができるとドンドン吸収される。
サンゴの殻の中にあるサンゴそのものも、海水中のCO2を植物プランクトンが炭素(C)に変えて体にしたものを取り込んで(食べて)作ったものだから、これも原料はCO2だ。
だからサンゴが繁殖すればCO2が少なくなるので、「低炭素社会に適している」などと言う人がいるが、サンゴにとってはCO2が少なくなると繁殖できないので、困る。
サンゴにとってCO2は、あるいは殻をつくる材料であり、あるいは体そのものを作ったり、生きるためのエネルギーを得るためにどうしても必要なのだ。
第一,「ツバルが沈む」というのは「サンゴが少ない」ということだから、ツバルが沈むのを心配している人がCO2を減らそうなどと考えることはあり得ない。
でも、ツバルの問題によく象徴されているように、「サンゴを守れ」と「CO2を減らせ」というまったく真逆のことを同時に口にする人がいる。
精神病でなければ「不協和」という人間心理の問題で苦しむだろうし、すでに統合失調症のような精神病になっている場合は、相矛盾することを言っても良心が咎めない。
NHKや朝日新聞,そして環境NPO、さらには政府、自治体の人が統合失調症ということはないので、「不協和」に苦しんで、補償行動をとっているはずだが、それはまた後に説明をしたい。
ます、ツバルは沈んでいないこと、ツバルが沈まない理由があること、将来とも簡単にはツバルは沈まないこと、の3つを明らかにして、次に移りたい。
(平成22年6月10日執筆、11日一部修正)