ところで、「なぜ、ツバルは沈んでいない」のだろうか?
まず、第一に「海水面」というものそのものの定義だ。
「地球は丸い」と言われていて、それはその通りだが、なんと言っても地球の直径は1.3万㎞もあるので、少しは歪んでいる。たとえば、北極と南極の間は少し短いし、赤道はふくらんでいる。
極の間の長さと赤道の直径の差でも30㎞ぐらいある。つまり地球自体が歪んでいて、それがセンチメートルでいえば、30000000㌢も歪んでいるということだ。
だから、地球の中心から海水面を計って、10㌢や20㌢の違いなどまったく判らない。30000000センチの歪みの中で10センチを見分けるということになる。
宇宙から人工衛星で海水面を測定しても,大気の気温が少し変わったら,それだけで距離の正確な測定が難しいのは誰でもおおよそ推定ができるだろう。
だから、「海水面」とは言うものの、実際には「大地」に杭(くい)を打って、そこに目盛りをとり,それで海水面が「上がったか、下がったか」を計っている。
それしか計りようがない。
そうすると、小さい地震があっても数㌢は地盤が変わるし、海岸線では波の浸食もある。大阪のように地下水をくみ上げれば地盤は沈下するので3㍍も変わる。
温暖化の「誤報」が続いたときに、日本人の多くが「海水面」というのだから、「海水の高さだ」と錯覚したが、実は海水面が変動するほとんどの原因は「陸の変化」なのである。
ツバルについては、ハワイ大学、オーストラリア政府、ツバル気象台などが計っているが、ここ数10年の変化は、20㌢ぐらいの上昇から10㌢ぐらいの下降までデータはばらついている。
ざっと言えば、「あまり変わっていない」ということだ。
「ツバルはなぜ、沈んでいないのか?」
という質問の第一の回答は、
「もともと、ツバルの海域は海水面が上がっていないから」
ということになり、もっと本質的な答えは、
「もともと、ツバルが沈んでいるという報道自体がウソだから」
と答えなければならない。
情けない答えだ。
地球温暖化が問題になった1980年頃から、「ツバルは一度も沈んだことはない」。だから、このぐらい、巨大なウソは社会的にも,政治的にも,さらに法律的にも何らかの処理をして置かなければならないだろう。
この問題はあとでまた戻りたいと思う。
それでは、「ツバルが沈んでいるというあの映像はなんだ?」ということになる。
確かに2006年頃、盛んにツバルの住宅に海水が押し寄せて床上浸水していたり、時には家の横で子供たちが泳いでいる映像が流れた。
このような映像までねつ造したとは考えられないので、映像が撮れるならツバルは実際に沈んでいるのだろうと錯覚する人がいる。
この錯覚を拭(ぬぐ)うためには、今、自分が住んでいる日本を考えてみるのが一番よい。
台風が来て、高潮が襲って海岸の近くに家が浸水するときがある。そんな時、日本に住んでいれば、住宅が床上浸水している映像を見て、「日本列島が沈んでいる」と思う人はいない。
テレビの説明も「台風何号が来て、どこそこが高潮で浸水した」と放送するし、見ている方も日本列島が沈んでいないことぐらいは判るので、「どこか、低い土地が沈んだんだな」と思うだけだ。
ところが、遙か南太平洋の島,「ツバル」ということになると、事情は一変し、テレビで数軒の家が浸水しているだけで、「ツバルが沈んでいる」と錯覚する。
それに追い打ちをかけるようにアナウンサーが「温暖化で海水面が上がり,ツバルが沈んでいる」と言うものだから、先入観も手伝って「これは大変だ」ということになった。
これが、「ツバルの錯覚事件」の顛末である。
それにしてもマスコミが不誠実といえば不誠実だが、騙される方もあまりに単純で子どものような国民のように感じられる。
視聴者の方も、数軒の家が沈んでいるのを見て、島全体が沈んだと思う方がおかしい。「島の航空写真はないのか?どのぐらいの面積が沈んでいるのか?」ぐらいの疑問を持たないと、もともと大人として生きていけないのではないかとも思う。
(平成22年6月10日 執筆 11日一部修正)