南太平洋に浮かぶサンゴ礁の島「ツバル」、正確に言うとファンガファレ島などのいくつかのサンゴ礁の島々でできたくにツバル、その島が地球温暖化で沈んでいると、日本ではNHKを初めとしたテレビや新聞が繰り返し報道した。 日本が「地球温暖化ヒステリー現象」とでも言った方が良い状態だった2006年から2007年頃、ほとんどの日本人が「温暖化してツバルが沈んでいる」と錯覚していた。その頃、私が「ツバルは沈んでいない。皆さんは、どこを見ているのだ」と指摘すると、テレビでもネットでも、「武田独自の議論」と言われて変人扱いされたものだ。 でも、事実はやがて明らかになる。 2009年頃になると、どうも海水面はそれほど上がっていないことが判ってきたり、広い太平洋では海水温も場所によって違い,海水面はさらに月の引力や地形などによるので、一概に言えないことが理解された。 そして、少しずつ「ツバルが沈んでいる」ということは言われなくなってきた。 そんな時,2010年6月に「ニューサイエンティスト」という雑誌に「変形する島々が海面上昇を否定」という名前の論文がでた。この論文は、過去60年間に撮影された航空写真と高い解像度をもつ人工衛星の写真を参考にして、ツバルを初めとした太平洋の島の面積を測定した結果を整理したものである。 この論文によると、南太平洋の海水面は60年前よりも12センチ程度、上昇しているが、それによって島の面積が小さくなっているということは無いことを明らかにしている。 もともと、海というのは、毎日、満潮と干潮で2㍍近くは上下し、地盤沈下,波の浸食などで、陸地と海の関係は複雑に変わる。 事実、日本の例では大阪が地下水のくみ上げなどで、この100年に約3㍍も地盤沈下した。ということは3㍍も海水面が上がったことを意味しているが,それでも大阪はなんということなく人間が住み,生活をしている。 10㌢や20㌢ほどの海水面の上下は頻繁に起こることで、大騒ぎする方がおかしいが、それも勉強せず,そして考えを巡らすことがない社会になっていた。 論文の紹介をつづける。 ツバルという国は主要な島、9つからなるが、そのうち、7島の面積が増大し、3割も面積が増えた島もあった。もちろん、日本のマスコミや温暖化脅威論の専門家が繰り返していたような「沈むツバル」などというところはまったく無かったのである。 (言うまでもないかも知れないが,「沈めば」、「島の面積は減る」) ツバルの問題で、もっとも大きなことは「事実と異なることでも平然と報道したNHKやマスコミ」が事実であった。これは「報道をする側である。 また、「NHKは事実を知らせてくれる」と信じて疑わなかった日本の素朴で真面目な国民はすっかりバカにされたことになった。 第二に、温暖化、海水面の変動,サンゴ礁など「ツバルの沈没」について詳しい科学的な知識を持っている専門家が、その専門性を捨てて、ウソをついたということである。 ここで、「ウソ」と言ったのは、2010年の論文がでて、始めてツバルが沈んでいないことが判った訳ではないからだ。 「専門家」という限りは、気象や地学の知識を持っている。物理学や資源材料が専門の私が読んだ2006年までの多くのデータでも、比較的簡単に「ツバルは沈んでいないし、今後の100年ぐらいで沈む可能性は低い」ということが判っていたぐらいだから、気象や地学の専門家はさらに詳しいデータを持っていた。 つまり、専門家は知っていたのである。 事実はハッキリしている。それは「ツバルは変わっていない」ということだ。将来のことならともかく、「現在、ツバルはどうなっているか」は「今」だから、別に議論はいらない。ツバルが沈んでいるかいないかはツバルに行って観測すれば判る。 ところが、NHKや朝日新聞などの不誠実なマスコミは、「ツバルの子供たちが「温暖化だ」と言っている」というような断片的な報道を繰り返して、事実を覆い隠していた。 なぜ、視聴者や購読者のためにテレビを放送し、新聞を発行しているマスコミがウソをつかなければならないのか、それは後に解説を加える。 ともかく、 「現在、ツバルは沈んでいない」 ということは事実だから、それを認めなければ話は始まらない。 もっとハッキリ言えば事実は「認める,認めない」の問題ではない。事実そのものに素直になれば、そのままなのだ。 だから、「ツバルは沈んでいない」。 (平成22年6月10日 執筆)