若い頃、スリムな体だったのに、どうも中年になると下の方に脂肪がついてという悩みは多くの人が持つものだ。

もちろん、「歳」というのは生物にとって避けがたいもので、それゆえに子どもを作り体を入れ替えるのだから、ある程度は仕方がない。でも、人生80年にもなってくると、もう少し後半生を楽しく過ごすことが出来ればと思うのも人情だろう。

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若い頃、なぜお腹が出ていないかというと、筋肉がついていて全体が引き締まっていることと、筋肉の「基礎代謝」自身が大きいので、それだけカロリーを消耗するからだ。

一般的に「ダイエットには運動」と錯覚されているが、人間のはエネルギーの消費から言うと、普通の生活をしている場合、運動によるエネルギー消費は20%・・・つまり5分の1でしかない。それより、「生きている」ことで使う基礎代謝の方が断然大きい(80%)。

どうせ運動は長続きしないということを考えると、基礎代謝を高めることになるが、基礎代謝の割合はおおよそ、心臓が10%、肝臓が30%、筋肉が20%、脳が20%、である。

確かに、脳をものすごく動かすと頭のてっぺんが熱くなってくるし、やたらとお腹が減る。

また、お酒を飲むと疲れを感じるが、肝臓が盛んに解毒をしているのだろう。なにしろ肝臓は30%も基礎代謝するのだから、エネルギーの消耗は激しい。

もう一つは筋肉だ。あまり頭も動かしたくないし、お酒も飲まないという人は、せめて「運動」をすこしして「筋肉を落とさない」ことも大切だ。

つまり、すこしややこしいが「運動でエネルギーを消耗する」ではなく「筋肉をつけて、その筋肉を使って運動をし、筋肉の基礎代謝が増え、それらをあわせて40%のエネルギーを消費する」というようにした方が効果があるという結論に達する。

前に、中年女性のダイエットについて書いたが、女性は40歳ごろに基礎代謝がが低下するが、これは子育て期間を終わって自然に筋肉が衰えて基礎代謝量が減り、腹筋が少なくなって内臓の脂肪が下にたれた状態になる。

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ところで、最近は遺伝子やタンパクの研究が進んで、いろいろなことが判ってきた。その中でも、日本人特有の現象があり、とても面白い。

簡単に言うと、日本というのは温帯の島国で気候も温暖であり、さらに大陸ではないので、逃げることも出来ないし、反対に外から突然、騎馬軍団が襲ってくることもない。

元寇の時でも、蒙古は朝鮮半島を占領し、船を調達し、高麗の兵隊を船に乗せてから日本に来襲した。だから日本の方も十分に準備を整えておくことができた。

このような風土の中では、自然に「穏やか」で「ゆっくりと生活する」ので、栄養もそれほどはいらない。

そこで、沖縄や奄美大島を除く地域に住む日本人はあぶらを含む豚肉のような高カロリーの食物は採らなかったので、たとえば、β3アドレナリン受容体の働きが弱っている。

その結果、脂肪細胞の燃焼が緩やかでエネルギーを消耗しない。日本人は、欧米人より200キロカロリーほど省エネルギーに出来ている。200キロカロリーというと、ちょうどご飯一杯ぐらいだから、それだけ食べなくても良いことになる。

アドレナリン受容体が発見されたのは60年ほど前だが、民族による遺伝的な差とか、β3アドレナリン受容体が単離され研究され始めたのは1990年代だから、まだ今後、具体的なことは変わる可能性がある。

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でも、次のことだけは変わらないだろう。

長い民族の歴史の中で、その民族は周囲環境によってさまざまな遺伝的、もしくは後天的なものを獲得していて、ダイエットのような簡単なものでも、あまり無理をせず、自分の体に聞きながら進めるのであろう。

基本的に人間は自分で自分の体を調整するようになっていて、外から無理をするのはだいたい、間違いなのだ。

さらに間違いと言えば、食糧の60%以上を輸入し、その半分を捨て、さらにダイエットなどと言っていたらバチが当たる。

(平成22513日 執筆 音声あり)

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