アメーバのような小さな原生動物も心を持っているかもしれない。でも両生類ぐらいからハッキリと中枢神経系が発達し、爬虫類でDNA情報と脳情報が同じ程度になり、哺乳動物になるとさらに脳情報が大きくなった。

でも、人間はその10倍も脳情報が多い。脳、つまり人間は心の生物なのである。

それにしては、現代人はまるで原生動物のように、「生きるだけに生きている」=「お金だけに生きている」。

時間が劣化しているのだろう。私はいつも「長谷寺の一日」を思い出す。

3月末から4月のはじめといえば、四季折々に美しい姿を見せる奈良の長谷寺もひときわ桜で綺麗な時だ。そんな時でも今の長谷寺はそれほど混雑していない。一体、日本人はどこにいるのだろうか?

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テレビでは引きこもり殺人が報じられ、「引きこもり防止ノウハウ」の話をしていた。厚生労働省はうつ病の対策を強化するという。でも、心はそんなものではない。

かつての平安時代のように、1年に一度でよいから2,3日をかけてゆっくりと長谷寺にお参りし、親しい人の健康を観音様にお祈りして、桜を愛で、そして帰ってくる。

日曜日は中央線に乗って木曽川のほとりに行く。やや下流ではとうとうと流れる川面、中流では山々と織りなす素晴らしい景観をたのしむことができる。名古屋ならほんの1時間も行くと、そこは「心の洗われる場所」だ。奮発してグリーン車に乗ると、先頭の車両がパノラマになっていて眼下に渓谷が拡がる。お金は高いけれどあの美しい風景はなにものにも代えられない。

山紫水明、四季折々の日本にいるしあわあせを味わうことができる。

ただお酒を飲むなら、祈りが入っていた方が良い。ただご飯を食べるなら、家族と楽しく団らんしながら、お父さんが蘊蓄を傾けて欲しい。そんな心の時間が人生を豊かにしてくれる。

これも私が良く引用するのだが、トルストイは「速い列車で行っても、遅い列車でも人生の時間は変わらない」と教えてくれた。「約束の時間に行っても、それより2時間早くいっても、私の人生は変わらない」という時間を過ごしてきた。それは私の人生をむしろ伸ばしてくれたような気がする。

豊かになったのに貧乏だ。仕事の能率は上がったのに忙しい。今こそ心が大切なのに朝、仏壇に手を合わせることもなくなった。どうも方向が違う。

また、週の後半は天候が不順になるという。そんな時には自然に逆らわずに家にこもり、またすることがある。そしてやがて天気が良くなったらゆっくりと時間を取って外に出よう。

豊かになったのに惨めになったのは、誰が悪いわけでもない。自分の行動がまずかったのだ。

海洋性の穏やかな気候、世界で温帯の島国という唯一の日本、私たちは絶対に大丈夫だ。明るい気持ちで心を大切にして明日からは過ごそう。

(音声がついています

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(平成22419日 執筆)

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