失敗つづきの人生だったが、その中でも、
「ズボンをはかずに独身寮を出ようとして寮母さんに注意された」
というのが、最大の失敗だった。もちろん、お金を損したとかチャンスを逃がしたという訳ではないが、思い出すと今でも赤面してしまう。
ワイシャツを着てネクタイを締め、背広まで着てなんでズボンをはかずに出ようとしたのか、今ではもう思い出さないが、玄関に寮母さんがおられたから良いようなもの、もしおられなかったら大恥だ。
二番目の思い出は、
「石を握って家に走った」
ということだ。小さい頃、お母さんにパンを買ってくるように言われて、走り、パンを買って(小さな袋に入っていたような気がする)、砂利が敷いてある坂道を走って帰る途中に滑って転んだ。
すぐ立ち上がって家に駆け込んだのだが、「ハイッ!」と言って母に出した手には石が握られていた。
転んだとき、どんな感じだったかは今は覚えていない。ただ、母が大笑いして、なにそれ?とかなにか言ったことを覚えている。
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最近の失敗と言えば決まっている。移動が多いので、電車に関する失敗が多い。
一つは電車の網棚にものを忘れることで、一番、多いのが夏の背広。2年に一度はやるので、最近では背広のポケットに何も入れないことと、出来るだけ網棚に乗せないようにしている。
二番目が駅でメールのやりとりをしていて電車に乗り遅れることだ。20分ほど前に駅に着くと一番、危ない。
この中には宮崎駅にすでに30分ぐらい前に着いたのに、日南方面の列車に乗り遅れて2時間も待ったことがある。いやはや・・・・
三番目が乗り換えで間違うことだ。
名古屋から東京か品川へ新幹線の乗ると1時間30分か40分。この時間が危険だ。そして東京方面ではどうも品川が鬼門である。
品川で新幹線を降りて、山手線、京浜急行、京浜東北線などに乗り換える。
「今日は間違えないぞ!」
と固く決意して改札口を出る。そして20秒ぐらいは注意力を保つことができる。
でも、すぐ、単調な歩道橋を歩いているうちに、新幹線の中で考え込んでいたことが浮かんできて、周囲の景色が目にはいらないようになる。イヤ、歩いているのだから、目は通過しているけれど脳の入り口で止まるのだろう。
そしてそれから数10秒、歩いているうちにすっかりどこに行くかを忘れて、適当な階段を下り、電車が来ると反射的にそれに乗る。
乗り換えるのは「階段を下りることと、電車が来たら乗ること」というのは、反射神経で動いているらしい。
でも、経験によると、なぜか乗車してからほんの10秒も経たないうちに間違いに気が付く。おそらく見てはいないけれど景色で気が付くようだ。
大森に行くのに山手線に乗る、恵比寿に行くのに京浜東北にのる・・・あなた、何を考えてるの?と自分に聞いて引き返す。
地図をよくよく知っているのに山手線と京浜東北線を間違えるが、方向を間違えることも多い。この場合は、自分が降りたときの東西南北が頭に入っているときに起こるようだ。
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もちろん、東京から名古屋に帰っても同じことだが、名古屋の場合、あまり間違えない。どうしてかな?と思ったことがあるが、おそらく名古屋では新幹線から降りた地下道に電光掲示板の時刻表がある。それを見ると、そこでいったん、思考が途切れてまた現世界に戻る。そこから階段まで数秒だから間違いが少ないのだろう。
まあ、失敗もおおよそ5回に1回か3回に一回ぐらいだから、仕方がない。
そんな失敗がなければわたしの人生も単調になってしまうが、失敗があるから思い出し笑いもしたり、話題にもできる。小さい失敗は人生に潤いを与える。
(平成22年2月27日 執筆)