「インフルエンザとは何か」というシリーズを書いてきたが、これはテレビの報道はもちろん、専門家のコメントすら信用できないので、自分の頭で考えてみることにしたことから始まっている。
また、どうも日本の偉い人はさらに信用できなくなってきたので、インフルエンザが一段落している時に、検討しておきたい。実は、今、とても興味ある瞬間だから。
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先日のNHKの解説で次のように言っていた(これは普通の報道だったが)
「インフルエンザは毎年、冬になると流行するが、季節性インフルエンザはすでに長く流行が続いているので免疫があり、毎年、推定で1500万人の感染者に止まっている。
しかし新型インフルエンザは新しいウィルスだから免疫を持たないので、季節性インフルエンザより格段に多い感染者を出す可能性がある。また第一次世界大戦の時に流行したスペイン風邪のように強毒性のウィルスの場合、世界で数1000万人規模の犠牲者を出す可能性がある。」
この報道は今まで何回も聞かされた報道で、多くの人がこのように考えているだろう。
でも考えてみると奇妙なことが多い。なにか策略が感じられる。正しく考えて自衛したい。
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まず、データを見てみよう。新型インフルエンザについては札幌が全国の先行指標になるので、札幌の感染者数(病院にいった人の数)を下に示した。
札幌では全国に先駆けて2009年の7月頃から流行が始まり、9月の第一週には感染者数はピークをうった。そしてその後、減少して11月にはほぼ沈静化している。
患者数はかなり多いが、季節性インフルエンザが大きく流行した2005年と比較すると患者数もピークの時の数もそれほど多くない。
この場合の「それほど多くない」というのは「新型だから異常に多い」ということではなく、質的には同程度ということだ。
2005年に流行したのは普通のA型インフルエンザなので、今度の新型インフルエンザと同じ程度ということは、次のことが考えられる。
1) もともとインフルエンザの感染に「免疫」など関係がないので、免疫のある季節性インフルエンザと同じぐらいで済んだ。
2) みんなが新型インフルエンザの感染に気をつけたのでひどくならなかっただけで、注意しなければもっと多かった。
3) 新型インフルエンザだったので、多くの人が心配して病院にいったので、患者が多いように見えるが、実際は季節性の方が患者数が多い。
実は、どれが本当か判らない。科学はなかなかこのようなことで結論を出すのが難しいものだ。
だから、2)と3)は頭に入れておくことにして、1)を考えてみたい。
「免疫が無いので、新型は危ない」といつも言われる。本当だろうか?
毎年、冬になるとインフルエンザが流行し、A型かB型かが問題になる。A型が流行するときにはB型は流行しない。どちらのワクチンを打つか、毎年、検討される。
でも、不思議だ。A型とB型とはウィルスが違うので、A型が流行していてもB型も同時に流行するはずだ。それなのになぜか「どちらかが優勢になる」と言われる。
この「優勢」というのは何を意味しているのか?
どうも、似たもの同士のウィルスの場合、一つの種類が優勢になると、他のウィルスに遠慮するようだ。ウィルスもなかなか礼儀正しい。
今度の新型インフルエンザの場合、2009年の秋に流行した。そしていよいよ2010年の1月になって季節性インフルエンザが流行する季節になった。そして例年より「季節性インフルエンザのワクチン接種数」は少ない。つまり、これから季節性インフルエンザが札幌で大流行するはずである。
だから、今はとても興味のある時期だ。
もし、このまま流行しなければ「免疫があれば流行しない」ということ自体が間違いになる。また「ワクチンが感染防止に効く」というのも怪しくなる。
もし、これから季節性インフルエンザが流行すると、今までに無いほど大勢の人が感染するはずだ。良く感染状態に注意しよう!
さらに奇妙なことが判る。
2005年に季節性インフルエンザが大流行した。その次の年の2006年は患者数のピークのない変な流行になった。2007年にはまたすこし季節がずれて流行したが、2008年はほとんど流行が見られなかった。
つまり、季節性インフルエンザの流行というものは、札幌市のようにある地域をとると、それほど規則的に起こっている訳ではないことも判る。
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次に、新型インフルエンザが強毒性に変わってスペイン風邪のようになる、といつも脅される。なぜ新型インフルエンザだけが強毒性に変わるのかというと「動物の体内で変異したから」と説明される。
でも、その点では季節性インフルエンザでも同じだ。インフルエンザはトリなどからヒトに感染することが多く、今回の新型だけが特別ではない。
もし、今回の新型インフルエンザだけが「強毒性」になるというなら、それと今までのインフルエンザの違いをハッキリさせないとダメだろう。
たぶん、新型インフルエンザが強毒性になることはほとんど無いだろう。
最後に全国のインフルエンザの流行の図を示して、また1ヶ月後ぐらいにはたして季節性インフルエンザが流行したかどうかを書いてみたい。