地球が誕生してから46億年.最初の地球の大気はチッソとCO2だった。チッソは「不活性ガス」といってほとんど反応しないが,一方,CO2は反応性が高いので,さまざまな反応で利用され,少しずつ減ってきた.

まず海ができるとCO2が海に吸収され,後に海で生物が発生する原料となった.次に,カルシウムやナトリウムと反応して大理石や石灰石などの岩石になり陸を作った.そして,海の中に生物が多くなるとサンゴ礁などの原料になり,これも陸を作る.

カンブリア紀に入って生物が爆発的に繁殖すると,生物がCO2を炭素(C)と酸素(O)にわけ,炭素を体やエネルギー源として使い,酸素を空気中に放出した.空気中に放出された酸素は大気圏に溜まり,さらに上空へといって成層圏でオゾン層を作った.オゾン層ができたおかげで太陽からの有害放射線が地表に達しなくなって,ますます地上では生物が繁殖し,酸素は現在のように20%を超えるまでになったのである.

古生代以来,植物の光合成によってCO2が消費され,陸上では石炭として蓄積し,海の中では深海に炭素が沈着したと考えられる.中生代以後,動物の数が増えると動物や海の生物が特定の地層のところに蓄積して石油になった.

つまり,CO2が大気中にあったことによって,地球は岩石ができたり,生物が育ったりしたのだから,「全てはCO2から」と言っても過言ではない.そして今,人間は,大理石,コンクリート(石灰石),鉄鋼(海の生物がはき出した酸素で沈殿),サンゴ礁(カルシウムとCO2),そして石油,石炭など,生活のほとんどをCO2に頼っている。

もし,CO2がこれ以上,減ったら,地球が寒冷化することのを止める手段を失い,植物が光合成できなくなり,温暖な気候の中で植物を食べて生きている動物も全滅するだろう。

あるビルの事務所で椅子に座っていたとする。

身の回りをみると,壁のコンクリートは石灰石というCO2とカルシウムでできている材料で作られたものである.また,木材でできたドアーは空気中のCO2と太陽の光で光合成して樹木が作った体だからこれも原料はCO2だ.

事務机に座っている自分の体も,着ている服も,飲んでいるお茶の葉っぱも,みんなCO2が原料である。食堂に行けば,お米から肉からすべて原料はCO2だ.

動物は植物がCO2から作ったものを食べて体を作っているから,CO2からできたというと何となく違和感があるけれど,確かにCO2が原料である.

天井で光っている蛍光灯も,数億年前,植物がCO2を原料にしてできた石炭や石油を燃やして電気を起こして光っている。そればかりではない.ビルの鉄骨や事務机,椅子などに使われている鉄ですら,15億年ほど前に海の中の生物がCO2を取り込んで自分の体を炭素(C)で作り,残りの酸素を放出したことで,海に溶けていた鉄が沈殿したのを使っている。

鉄は,沈殿しなくても人間が使うことができたかも知れないが,あの広々とした海に溶けている鉄を利用するのはかなり難しかっただろう。その点,人間が鉄を使う前にCO2を原料として「鉄鋼床」としてまとまっていたことは大助かりだった.そのおかげで,人類はあまりエネルギーを使わずに鉄を利用している。

このように考えると,現在の日本では忌み嫌われているCO2こそ,人間や生物,そして地球を形作っているものなのである.

私は昔流の考え方をするので,今までお世話になってきたCO2が,すこし気温を上げるからと言って毛嫌いするのは「恩知らず」のように思う。

また,温暖化を脅威だと考える人の中には,「CO2は水銀のような毒物だ」と言う人がいるが,これは全く間違っている。空気中の酸素が無くなれば別だが,CO2自体は人体に対して「毒物」ではない.科学的なことは正確に表現しなければならない.

もし,人間が自然環境に貢献できるとしたら,それは「CO2を増やすこと」だろう.もともと地上にあったCO2の一部は,今,石油や石炭となっているので,それを人間が燃やせば元のCO2にすることができる.

そして石油・石炭が枯渇してきたら,海底から大昔に沈んだ生物の死骸を出してきて,それを荼毘に付してあげれば,生物は再びCO2に変えることができる.

かくして,人間の活動で古生代のように,現在のCO2の15倍,つまり0.5%から1.0%まで増やせば,この地上はさぞかし生物が繁栄した頃の楽園になるだろう。

(平成21年10月21日(水))