鳩山内閣はCO2の25%削減すると言っている。それに対して,産業がどのような影響を受けるのかという議論も大切だが,私には日本の文化への影響,日本人の人生への影響の方が気になる.

まず,冷暖房費の節約のために「断熱住宅,密閉住宅」の方向に進もうとしている.たしかに,日本の全部の住宅を工事するのだから,住宅産業は大いに潤うだろう。

でも,その結果,日本の住宅はヨーロッパのような密閉式になり,日本の素晴らしい自然の中で人生を送るということができなくなる.

今から1000年ほど前は「中世温暖期」といって,今より1℃程度,気温が高かったと考えられている。温暖化というのは,夏の気温はあまり上がらずに冬の寒い日が無くなる傾向があるので,当時の夏もそれほど寒くなかったのだろう.寝殿作りという日本の建築様式は,家の周りに廊下があり,外との間になにもなく,吹きっさらしである.それでも,吹雪の日のような時は別にして,快適に生活ができた.

日本の家屋は,自然の中で生きるようになっている.それに対してヨーロッパの住宅は自然に対抗して建てる。その結果,日本の住宅の寿命は30年でヨーロッパは100年.だからヨーロッパがすぐれているというがそれはあまりに単細胞の考え方だ.

環境と言うのは風土,文化であり,それはその地域の歴史,気候を大切にするのだから,ある特定の業種に利益をもたらすために,日本の優れた住環境を根本から破壊するのには疑問がある.

また,「エネルギーを多く消費する素材産業を国内から追放する」と内閣府は言っているが,それも疑問がある.

人間は「お金」だけで生きているのでは無い.日本の若者には,「学校を卒業し,結婚し,親に近いところで生活しながら,幸福な一生を郷里で送る権利」があると筆者は思う.だから,結局は,製造される素材を日本の中で作り,そこでCO2がでるのは,「日本人が使うものを作るためにでるCO2」だから,それを外国で製造して見掛けのCO2排出量を減らしても地球の環境にも貢献しない.

これまでも,日本の工場が外国にでることによって,「国内産業の空洞化」がおこり,そのために働く場所を失う若者が問題になった.それはもっぱら人件費やエネルギーコストなどの経済面からであった.

政治はむしろ,日本人が日本で働くチャンスを作るものであり,CO2のように日本への影響が不明確なことで,日本人の働き場所を奪うのにはよほど慎重に考えなければならないだろう.

2008年の秋に起こり,日本にも甚大な打撃をあたえた金融崩壊をここでもう一度,考えなければならない.

金融崩壊とは,「自分たちで使うものを,自分たちで作らずに,労働者に作らせ,自分たちはお金だけを動かして楽な人生を送ることが良いことだ」というアングロサクソンの考え方の延長線で起こったことである.

アメリカ人はそれで良いかも知れないが,日本人が巻き添えになる必要は無い。

すでにアメリカは見るべき製造業はなく,金融国家になった.そのアメリカを学んで失敗したのが,イギリス,アイスランド,リトアニア,そしてスイスだった.

ヨーロッパでもフランスやドイツはアングロサクソンの「架空の仕事」には疑問をもってやや距離を置いていたために,大きな損害を受けないですんだ.日本も製造業の売り上げは一時的に減少したが,製造業の技術は人間が失われた訳ではない.

私は,「温暖化は日本に被害を与えない」という考えであるが,仮に温暖化が日本に打撃を与えるにしても,その対策によって,多くの国民が「額に汗して働くより補助金を貰った方がよい」とか,「日本の自然の中で人生を送るより密閉した人工的空間で生活せざるをえない」ということになるほうが,長期的に見て打撃が大きいと思う。

鳩山政権のもたらす近未来の日本ははたしてどうなるのだろうか? それは深く日本の風土と文化を考えたあげくの政策なのだろうか?