数学は全然,色っぽくいというところがない.それは数学の先生の責任か,それとも,1,2,3.5.7,11,13,17,19・・・というような数字自体が色っぽくないのか,それは判らない.

そんなことをいうと数学者から文句を言われるだろう.筆者は物理学だが,物理も色っぽくない.太陽の光が単一スペクトルにならないということはかなり色っぽいのだが,なにしろ女性の嫌いな電気などを扱っている.もともと,表現が硬いのも問題だろう.

それはともかく,小学校か中学校で,「数」というのを習い,その時に「素数」を覚えた.最初に並べた,2,3,5・・・と続く数だ.

記憶によると,「素数」とは,その数自身以外では割れない数・・・だったように覚えている。4は2で割れるし,12となると2,3,4,6,で割れるが,そのとなりの13は割れない

この素数を「恋」に使う動物がいる.私たちはとかく学校で習ったものを生活の中で生かし切れていないのだが,自然はすごい。

一つの昆虫は,学名をMagicicada tredecim(MT君)といい,もう一匹はMagicicada septendecim(MS君)という.どちらもセミである.

MT君は13という素数を使い,13年間はそっと静かに土の中で生活をして,やおら13年目に羽化して地表に出現する。MS君はもう少し辛抱強く17年ごとに羽化する。

なぜ,MT君が13年間も地中にいて,13年目に出てくるかというと,必ず彼女に会うためである。MS君は同じく17年ごとに一回,デートする.

もし,素数を知らないで,MT君の中に12年目に出てくる浮気もののセミがいたとする.浮気君は浮気をしたくて13年目ではなく,12年目に地上に出てきたが,12という数は,2でも3でも4でも,はては6でも割り切れるので,浮気君が地上に出てきたときに会う彼女は,いつも違う。

2年ごとに地上に出てくるセミなどはうるさいだけなのだが,どうしてもそれともつきあってやらなければならなくなる.だから,せっかく12年まっても,自分の趣味と一致する永遠の恋人を見付けることが難しいのだ.

ところが13年や17年を守って成虫になったMT君とMS君は,自分と同じ仲間をすぐ捜すことができる.なにしろ,13年前の仲間がまた同じ時期に出てくるのだから.

気も合うし,同じ「国籍?」でもある.だからお互いに信頼して,すぐ恋に落ちることができる.そして子供を産むと,その子供はまた13年目と17年目に成虫になるので,純潔も守ることができ,その種はますます繁栄する.

すばらしい! 数学もこんな活用の仕方があったか!