総選挙が終わり,長かった自民党政治にも一つの時代の終わりが来た.選挙結果についてはいろいろな論説があるが,私はこの選挙で,マスメディアの語彙不足を強く感じた.

もしかすると,語彙(ごい・・使われる単語の総数)が不足しているのではなく,理解度が低いのかも知れない.

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その一つが,「無党派層」である.

無党派層とは,どの政党も支持していない人たちを言い,かつては「無党派層」というと政治に関心が無く,「困った人たちだ」と発言する「識者」も多くいた.

最近では,どうも無党派層も無党派層としての考えがあることがわかり,簡単には批判しなくなった.それだけでも若干,進歩したといえるが,私は「無党派層」という単語自体に問題があると思う。

今回は民主党が大勝したが,自民党と民主党になにが差があるかと聞かれて,しっかり答えられる人はいないだろう。指導している人としては鳩山さん,小沢さんは共に自民党中の自民党という体質を持った人で,二人とも大金持ちだ.

また,民主党も自民党も「マニフェスト」というのができて,すっかり何を目指しているのか判らなくなった.選挙のたびに中心的な政策が変わる。基本的には「増税,ばらまき」という基本路線で一致しており,ただ自民党が政権を持っているから自民党が利権派だが,民主党が権力を持てば,当然だが,税金を配るのだから利権派になる.

日本には小さな政党を別にすると,驚くべきことに政党というのがない.当選すれば税金をもらう貴族に変身するので,ただ当選すれば良い.そうなると,その時,その時に国民に耳障りのよいマニフェストを創作すれば,それで価値になる.マニフェストというのは問題なのだ.

政党がなければ国民は「無党派」にならざるを得ない.無党派というのは,特定の党を支持していない人を呼ぶのではなく,日本に明確な理念を持った「党がない」と認識する人のことなのだ.無党派を批判するマスメディアは実に不見識で,「10年間は政策が変わらない党」が存在しない方を批判しなければならない.

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もう一つが,「国替え」,時には「お国が替え」と,「お」をつけて言うことすらある.議員の候補者が選挙区を替えることを言う.単に,選挙区を替えるだけだから,何が「国替え」などと大げさに言っているのだろうと思えば,正常だ。

かつて,日本が封建時代の時に,幕府に命じられて大名がお国を替えさせられる.上杉が越後から会津に移動(移封という)したりする事を言う。「国替え」という言葉には,議員は殿様であるという前提があり,国替えを命じる党の幹部,たとえば小沢さんは天下人だということだ.

でも,民主主義は違う。民主主義は民が主人であって,代議士は民の代表に過ぎない.決して,お国替えなどという言葉を使ってはいけないのだ.

転任,転地などが適当で,決してお殿様をイメージする言葉を使用してはいけない.もしかするとマスメディアは民主主義を嫌っているのかも知れない.

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このお国替えに正反対のようであって,根が同じ言葉に,「小泉チルドレン」がある.

いうまでもなく,小泉チルドレンという言い方は,小泉首相の時に総選挙で,急遽,候補者に仕立て上げられて,何の見識もなく,まるで「子供=チルドレン」のように小泉さんの子供たちだということだ.

それでは,選挙民は判断力のない子供を選んだとマスメディアは言いたいのだろうか?今回の選挙は「小沢チルドレン」という言葉が使われ,それを「誇りに思う」という議員すら登場している。

議員は国民の代表である.その国民は子供に政策を決めてもらいたくはない.選挙権でも20才から与えられるのに,それで選ばれる人が「子供」とはどういういみだろうか?全く,話題になれば何でも使うというのでは,マスメディアの存在価値はない.

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日本は民主主義ではないと私は常々,思っているが,無党派層,国替え,そしてチルドレンと呼ばれる衆議院議員・・・私は民主主義をバカにするのもいい加減にして欲しいと思う。

日本に民主主義を定着させるためには,このようないかがわしい用語の追放から始めた方が良いとも考えられる。実は,政治家もマスメディアも,いわゆる識者も,愚民主義だ.選挙に行きましょうなどと言っているけれど,「お殿様を選ぶ」ぐらいにしか思っていない.衆議院議員は代議士という。代議士とは国民の代わりであり,その目線は国民と同じでなければならない.ただし,現在のように議員の収入が億を超えるようでは,議員になりたくて仕方がないから,このシステムを変えないと個別のことを言ってもダメだろうけれど。.....

(平成21831日 執筆)