温暖化の恐怖の一つは「際限なく,暑くなって行くのではないか?」ということだろう.もともと人間は寒冷な気候より,温暖なほうが良いのだから,温暖化が怖いと言うこと自体がおかしい.

でもヒートアイランド現象があって,東京は大阪,そして名古屋の人は気温が上がるのを恐れている.たとえば東京の気温上昇は「丸の内」で測定しているし,上昇のほとんどが都市化によるものだが,それでも東京の人は恐怖を感じている.

都市化は自分が判断して都市化しているのだから,それを直せばよいのだが,人間とは不思議な心を持っているものだ.自分で解決できるのに,それをやるのは辛いので(東京の人口を減らさなければならないから方法が無い),CO2に責任をかぶせている.

ところで,温暖化が危険かどうか,少し長期的な気温変化で見てみよう.

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この図は3万年前から現在までの気温の変化を南極の氷で調べたものである.グラフの右,上に30と書いてあるところが3万年前,20とあるのが2万年前だ.

その頃,酸素の同位体から気温を推定すると10℃ぐらい低かったと思われる(酸素同位体の変化はそのものが気温変化ではないが,前の間氷期と現在ではおおよそ10℃程度は違っていると言われている)。

2万年前までは,地球の多くが氷河に覆われていてマンモスが活躍した時期で,人類はアフリカのどこかにひっそりと暮らしていた.

ところが,1万7000年前から気温が上がり始め,1万年前にはとても暖かくなった.世界中に文明が誕生し,洪水伝説ができたころだ.それからずっと地球は次の寒冷期に向かっている。

グラフの左の方で1万年前にピークを打った後,徐々に気温がさがっている。これは前の間氷期の時と同じで,やはり今度も,徐々に寒冷化して氷期になるのだろう.

氷期で生きる私たちの子孫はとても辛いことになる.暖房が必要なだけではなく,なにしろ地表の多くが氷河で覆われるのだから,作物が取れない.大量な餓死は避けられないだろう。

もしCO2の危険がそれほどでもないなら,もし人間の活動で少し暖かくできるなら,この際,2℃ぐらい温暖化しておけば寒冷化の時期が遅れるので,私たちはせめて子孫に対して良いことができる。

日本には「子孫のために温暖化を阻止する」と言っている人や団体がいるが,もう少し,慎重によく考えてみたらどうだろうか?

(平成21722日 執筆)

(注) ここで用いたグラフは,飯塚先生,柿澤先生,杉山先生,そして的場先生がお書きになった「なぞの宝庫・南極大陸」という技術評論社の「知りたい!サイエンス」のシリーズから参照させていただいた.このシリーズはサイエンスをかなり詳細に,かつ分かりやすく書いてあり,科学に興味のある方はお勧めだ.そして,その中でも南極のことを説明したこの書籍はご推薦できる。