このシリーズを北朝鮮問題から始めた理由はすでに述べたが,人間というのは不思議なもので「近い国は憎く,遠い国は憧れる」という性質がある.中国の故事ではこれを「遠交近攻」と言う。

これには理由はあるが,ともかく近い国を憎む感情が国民の間に広がることがある.この感情が高じて「ケシカラン!たたきつぶしてしまえっ!」というような乱暴な議論に発展し,戦争になる。

だから,近い国との感情的な諍いは早く片付けておいた方がよいが,それにも「精神力」がいる.とにかく「憎らしい」と思っている相手を「理解しよう」とするのだから,かなり辛い.でもそこが「大人の態度」だろう.

・・・憎らしい人を理解する・・・・

現在の日本人の多くが北朝鮮に悪い感情を持っている最大の理由が「拉致」だが,先回に整理したように,拉致の原因は北朝鮮だが,それを防ぐことができなかったという点で,日本も大いに反省する必要がある.

そこで,敢えてこの拉致問題を「相打ち」として話しを先に進めたいというのがこのシリーズの趣旨である。

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もし,北朝鮮が独裁国だったとして,それを理由に北朝鮮を批判する事ができるだろうか? 国家でも,家庭でもその人たちが決めることであり,それが自分たちと違うという理由で批判するのは傲慢なような気がする.

北朝鮮は中国,ロシア,韓国,それに日本(アメリカ軍が駐留している日本)に囲まれた小国で,国を維持するのはなかなか困難である。そのような国が独裁制を取るのは良くあることで,切迫した国民感情から言えば,異論が多く手続きが面倒な民主主義より,独裁政権の方が国を守ることができると考える場合が多い.

だから,悠悠と独立して経済的にも裕福な日本が,北朝鮮の政治体制に文句をつける理由はない.

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次に,「北朝鮮は原爆を持ち,ミサイルを保有しているからケシカラン」というのがある.

私は平和主義で,原水爆反対だが,これについても私は北朝鮮を容認する。というより容認せざるを得ない.

その第一の理由は,「アメリカが原水爆とミサイルを持っている」という事実であり,そのアメリカ軍が日本に駐留し,日本はアメリカと同盟を結んでいるということだ.

日本の基本戦略は「自らは原爆もミサイルも持たないが,それをアメリカに依頼している」ということだ.だから,日本は実質的に原爆とミサイルを持っているという事になる.

だから,平和主義で原水爆反対だから,アメリカ軍が日本に駐留するのに反対であり,かつアメリカとの距離を他のアジアの国と同じようにするべきと思う。それによって経済的な損失があっても,日本の独立性と魂を守りたいというのが私の持論である.

簡単に言うとこうなる。

1) 日本は実質的に原爆とミサイルを持っている。

2) アメリカは数1000発の原水爆と,ミサイルを持っている。

3) 独立国はみな,同じ権利を有する。

4) 従って,北朝鮮が原爆とミサイルを持つのは当然の権利である。

5) 日本人が北朝鮮の原爆に反対するなら,その前にアメリカと手を切る必要がある.

6) 広島,長崎にアメリカ人の居留を認めるなら,それも考え直さなければならない.

以上の私の考えは直ちには同意されないだろう。

日本人はアメリカの原爆に反対しないが,北朝鮮の原爆はとても厳しく非難する。国連でも非難の先頭に立っている.私は恥ずかしい.北朝鮮を批判するなら,私なら国連でアメリカを批判する.

日本人の心の中に,アメリカ人を尊敬し,北朝鮮の人を蔑視する気持ちが原因になっていないだろうか? 私たちはアジア人なのに,白人を敬う気持ちがないだろうか?

わたしは日本のマスメディアや,いわゆる知識人の発言の中に,アジア人蔑視を強く感じる.,これが「白人崇拝」なのか,それとも「長いものに巻かれろ」か「お金をくれる人に尻尾を振っている」のか判らないが,私には惨めに見える。

日本人は誇り高い。お金で魂を屈したくない。

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だから,北朝鮮が独裁国家であると言うこと,北朝鮮が原爆を持ち,ミサイルの実験をしているからといって,北朝鮮が「悪い国」とすることはできないと私は思う。

(平成21712日 執筆)