1. 持続性,社会と家庭,そして日本文化

環境問題でさらに深層に流れるのは持続性,社会と家庭,そして日本文化である.現代の近視眼的な風潮が家庭の倫理を社会に持ち込む傾向があり,「節約」という社会にとってもっとも危険な考え方がアプリオリに大切なものとして言及されている。家庭では節約は大切であるが,世界は拓かれており,かつ競争の社会である.「若者が元気になること」はきわめて大切で,日本の将来,郷土の繁栄はそれによって実現する。

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最後に,日本の伝統と多くの偉人が過去に述べていることを紹介し,それらが現代の環境問題でもきわめて大切であることを示したい。日本は世界でも独特の文化を持っており,その中心をなすものは「してはいけないことはしない」という誠実さである.最近では日本政府がこの誠実さを逆手にとって,自らの利権をむさぼろうとしているが,これこそ,日本の特性を奪って衰退に導くと懸念される。

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もう一つの問題は「ミネルヴァの梟」,つまり生半可な知識を持った大人が,自らが未来を見ることができないことに気がつかずに,夢や希望をもち,そして時には無謀な若者を抑制していることだ.特にNHKを見て「頑張ろう」と思う若者はいない.年寄りが自らの利権のために将来を暗く見せ,それによって若い人の心を縮めてしまうほど悪いことはない.持続性は「節約」によってもたらされるものではなく,イノベーションによって持続するものである.そしてイノベーションが続くためにもっとも重要なことは「明るい社会」である.CO2は人間と生物にとってもっとも大切な資源であり,何も考えずに「低炭素社会」などを唱えることこそ浅薄な現代を表している。

参考文献

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2) Meadows, D. H., D. L. Meadows, J. Randers, and W. W. Behrens Ⅲ; The Limits to Growth, p.124, Universe Books, New York, USA (1972).

3) King C J, Separation Processes, Tata Mcgraw hill. (1972)

4) Skinner, B.J., “Earth Resources”, Prentice-Hall Inc., New Jersey (1986)

5) Asyby M.F., “Materials Selection in Mechanical Design”, Pergamon Press (1992)

6) Ferguson E S, Engineering and the Mind’s Eye, Massachusetts, The MIT Press, (1993)

7) Brown H, The Wisdom of Science, Cambridge University Press (1986)

8) スウィフト J(中野好夫訳), ガリバー旅行記,新潮社 (1985),

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13) マハトマ・ガンジー著,田畑 健編、片山訳「ガンジー自立の思想」(2000)

14) 淡野安太郎、「社会倫理思想史」 剄草書房 (1959)

15) 源 了園,「義理と人情」 中公新書 (1969)

16) 大場英樹,「環境問題と世界史」,公害対策技術同友会,(1979)

17) 渡辺京二,「逝きし世の面影」葦書房 (1998)

18) 増子 曻、「技術原理とエネルギー」、山陽特殊鋼技報、vol.5, p.2-7 (1998)

19) 池田清彦,「新しい生物学の教科書」,新潮文庫 (2004)

20) 丸山茂徳,「生命と地球の歴史」,岩波新書 (1998)

21) 池田清彦,養老孟司,「ほんとうの環境問題」,新潮社 (2008)

22) 日下公人,武田邦彦,「つくられた環境問題」,ワック出版 (2009)

23) 武田邦彦, 「分離のしくみ」, (1988), 共立出版.

24) 武田邦彦、「エコロジー幻想」、青春出版、(2001)

25) 武田邦彦、「二つの環境」、大日本図書、(2002)

26) 武田邦彦,「偽善エコロジー」,幻冬舎 (2009)」

27) 武田邦彦,「大麻ヒステリー」,光文社 (2009)