政治には二通りの考え方がある.

一つは「民衆はバカだから,賢人が殿様を決め,政策を決める」という考え方だ。賢人主義という.

もうひとつは「民衆は一人一人は知恵が無いようにも見えるけれど,全体としては正しい判断をするから,民衆が大統領を決める」という考え方だ.民主主義という.

思い出せば,賢人会議というのもあったような気がする.国民より賢人と呼ばれる人がいるということは民主主義ではない.

そう,現在の日本は賢人主義だ.そして,その賢人とは「中央官庁の官僚」である.彼らを誰も賢人とは呼んでいないし,彼ら自身も表面上はへりくだっている.

でも,心の中は傲慢だ.「どうせ,庶民に任せても碌なことはないから,俺たちが日本の将来を決める」と思っている.これは絶対に間違いない.

「だめなんですよ。武田先生。そんなこと市民は考えもしないから」と官僚はいつも言っている.口には出さないが「市民はバカだから,騙すしかない」と彼らは心の底から思っている。

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そこで「エコポイント」を決める。本来なら,その分だけ減税して国民が買いたい物を買えばよいが,それでは「バカな国民がロクなものは買わない」という確信があるから,賢人たちで買う物を決める.

その結果,500リットルという巨大な冷蔵庫がもっともエコだということになり10000ポイントをつけ,1350万円の車もエコということで70万円の税金を免除する。

賢人はさすが素晴らしい.国民が環境を考えると,小さな冷蔵庫を買い,軽自動車を買うので,それを阻止しなければならないと思うのだ.

私は人生で何回か,いわゆる高級官僚という人と仕事をした.そこで分かったことは,彼らは人生で一度も「リスク」をおったことがないということだった.

なにしろ税金を使って仕事をする.それが失敗しても赤字というものがない.商売をする上で,一番,考えなければならないのは「投資した分だけ稼げるか」ということであり,1億円投資して,500万円の売り上げでよいならこんなに楽なことはない。

事実,国の政策は投資に対して平均の回収率は5%だから,まさに1億円投資して,500万円がかえっているのである。

国の仕事はもうけることが前提ではないから,それでよいというなら,力がないのだから賢人ぶって貰っては困る。

そんな人たちが,国民一人一人が買うものまで決めるのなら,いっそ,選挙を止めて,中央官僚が議員と首相を決めたらよいじゃないか!

でも,そんなにヤケになりたくない.とにかく今回の「景気浮揚策」の15兆円と言えば,四人家族で36万円だ。それなら,36万円減税して貰った方がなんぼかましである.

(平成21618日 執筆)