このホームページでは,ハイブリッドカーについて,

1)すでにこのようなエネルギー回生システムは工業的にはそれほど珍しいものではないということ,

2)ハイブリッドカーがエコなのかどうかは判断が難しいこと,

を書いた.

その後,専門家の方からエンジン特性やその他の重要な技術情報に基づいた正確な論文を送って頂いたので,追加してハイブリッドカーについて解説を加える。もしさらに詳しく知りたい人は専門誌(京機短信など)をお勧めする。

ハイブリッドカーが注目を浴び,折しも不況で自動車会社の収益が減り,それを国民全部で助けようということになり,エコカーに大きな税金を投入することになっている.

軽自動車に補助金を出さずに,エコカーと呼ばれる200万円以上の車に「エコ」という名前で税金がでるのも奇妙な話だ.それも補助金を受け取るメーカーは「トヨタ」,「ホンダ」などだから,どちらかというと「お国が困っていたら,これまでのご恩でお金を出します」と言いそうな会社だからだ.

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それはともかくハイブリッドカーについて正しい知識を整理しておきたい.

かつて,「エネルギーを使ったら,そのまま使い捨て」というのが普通だった.でも,工業が発達してくると,何とかエネルギーを回収できないかということになり,原理原則は違っても,「回生電車」,「ヒートポンプ」,「コジェネレーション」など多くの方法が考案されてきた.

その中で,難しい用語だが「示強性変数」に注目してエネルギーを回収する手段の一つが「回生」であり,電車や化学工場の蒸留などに使われている。その一つがハイブリッドカーである.

でも,ハイブリッドカーを「回生装置」に分類すると,科学としては厳密性を欠くというご指摘があった。その通りで,他の要因が大きいからだ.そして,それをさらに「エコ」に分類すると,さらに問題は複雑になる。

まず,ハイブリッドカーの原理だが,エンジンを「無駄に動かしている」とか「ブレーキを無駄に使っている」ということに着目して,その持っているエネルギーをバッテリーに電気として蓄積するという考え方だ.

たしかに,自動車を少し離れてみると,実に無駄が多い.わずか50キログラムぐらいの体重の人を一人,運ぶのにその30倍も重い1.5トンの車体を動かす。

エンジンは一所懸命,回っているが,ガソリンの大半は熱になったり,横揺れに耐えたりしている.それにエンジン自身も「効率のわるい条件」で回している。

自動車のエンジンは,何キロで走っても,どんな加速をしても同じ「エネルギー効率」で走ることができるわけではない.時にはエネルギー効率は10%しかならないこともある.

走り出したときには快適に加速して欲しい,燃費は低くして欲しい,止まっているときには・・・と乗る側の希望は際限がない。それもどの人もエンジン特性を良く知っているわけでもなく,運転する側の希望だけをいうのが普通だ.

自動車会社も悪げはないのだが,買う人の希望に添う.これも「お客様は神様」だから,当たり前のことでもある。

ところが,そうするとエンジンの効率を最大限に使うことはできない.そこで,一つの新しい考え方がでてきた.

「ブレーキをかけるときに,止まるエネルギーを電気に替えるのはもちろん,エンジンが不効率で回っているときに,もっと高い負荷(エネルギー)のところで回して効率を上げ,余計な分を一時的にバッテリーに貯めておいて,それを必要な時に使おう。そして止まっているときなどはエンジン自体を止めてしまおう」ということだ.

確かに理想的だ.ブレーキのエネルギーは電気に変わる,エンジンは常に最高効率で回る,そしてアイドリングの損失はない・・・こんなに良いことは無い.

でも,この世の中は良いことばかりは起こらない.もともとガソリンを燃焼してその膨張力でエンジンを回すという単純な原理から,ガソリンー燃焼―エンジン動力―電気への変換―電池への蓄積―放電―電動機の回転,と何段階にもなるのである.

つまり,ガソリンでモーターを動かすというのだから,エネルギーの使い方としては感心したものではない.

それに「バッテリーが満杯だったら,貯めることはできない」ということになる.バッテリーは大きいと重いし,資源も使う.だからできるだけ小さくしておきたいのだが,小さくするとすぐ充電してしまって,ほとんど使えないし,またバッテリーにも充放電の回数の寿命がある.

また,ハイブリッド・カーは重量が200キログラムぐらい重い.どのぐらい重いのかというのは「性能」にもよるので難しいが,とにかく重い.

200キログラムというと大人が3人だけから,1人で運転するのにいつも3人乗せているようなものだ.それに製造する時にその分だけ余計に資源やエネルギーを使う。

車重が重いと,道路も傷めるし,いろいろなことがおこり,部品が複雑ならそれでまた故障も発生するので,環境的には損失が増える。

あれこれとあって,ハイブリッド・カーが「本当にエコ」なのか,専門家は声を上げなければならない.政治的には利権もあり,マスメディアは「誰かが「ハイブリッドカーはエコ」というと,事実を吟味せずに報道する。だから,専門家は利権はないので,研究結果をそのまま発信する必要がある.

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でも,さらに考えなければならない.

それはかりにハイブリッドカーが燃料消費量でエコだとしても,「ハイブリッド・カーを買いましょう」という路線が果たして「多くの日本人が考えている,将来の理想的環境」に近づくものかどうかである。

2008年の秋に突然の金融崩壊に見舞われ,世界の自動車販売台数は一気に半分ぐらいまで下がったと言う.自動車会社は大弱りだが,不思議なことに社会では何も起こらない.

販売が減ったから,宅急便が届かなくなったとか,子供の送り迎えが不自由になったという話を聞いたことがない.

実に不思議なことだ.もし「自動車がどうしても必要で,定期的に買い換えなければならない」というなら,半年も自動車販売が停滞したら,社会的な影響が出るはずである。

でも何も起こらない.ということは,今まで「無駄に自動車を買い換えていた」ということになる.つまり「必要な自動車の数より,販売台数の方が過剰だった」と言うことだから,それなのに「エコ」といってハイブリッドカーを買わせる政策は環境政策ではないだろう。

また,より長期的に見ると,ありあまる車が駐車場で眠り,普通の町中で走るには「暴力的エンジン」を持ち,低い効率の低出力で走る・・・ということはすべて将来の環境像とは合わない。

私たちは今,子供たちにも「環境の大切さ」を教えている。それなら教える側がもう少し真面目でなければならないだろう.また,自動車のことをもっとも良く知っている自動車会社は,その社会的責任を自覚して,ハイブリッドカーをエコというならその学問的理由と長期的環境との関係をしっかり社会に発信しなければならないだろう.

(注) このコメントの数字は,石田,京機短信32/33 06 2.5/06 2.20によった.

(平成21520日 執筆)