NHKが誤報を繰り返すにはそれなりの理由がある.だから誠実なNHKを作るにはその理由を無くさなければならない.

その原罪を冷静に考えてみる必要がある.

まず,第一にテレビを買った人とNHKが受信契約を結ぶのだが,NHKはその実,一度も受信契約を結んだことはない.現実には「テレビを購入する」とそれが「受信契約をした」ということになるのだが,テレビの販売店はNHKの代理店ではない.

NHKの受信料が契約の原理に反した特例であり,特例であるが故に多くの人は知らずにテレビを買っている。これが第一の原罪である.もし「NHKと契約を結ばないでよいテレビ」も並行して売ったら,ある程度は売れるはずだし,フェアーになる。

第二の原罪は,「損害を受けても契約を破棄できない」ということだ.これまでNHKに損害を受けた人は多い.たとえば,1)NHKを批判したいのだが,批判すると紅白歌合戦に出してもらえないので,憲法に保障された言論の自由を制限された歌手,2)事件や商売の報道の内容によって直接的な被害を受けた人,3)私のように自分の仕事のことで誤報が続き,そのたびに訂正するのに大変な思いをした人,などである.

契約の相手が,損害を与えたのに契約を解除できないなど,どういうことだろうか?

第四の原罪は,第三と類似しているが,「受信料をとっているのに,その当人に放送の是非,予算の是非を聞かずに国会に聞く」というシステムだ.

NHKは契約者の意志に沿っているかを,国会,アンケート,視聴者代表の委員会などでやっていると言っているが,そんな面倒なことをしなくても,受信料を契約制にすれば,NHKを見たくない人は契約を打ち切るから簡単だ。

どんな商売でも,気に入ってくれるからお金を出してくれるので,それに全精力を費やす。でも,NHKはこの歪んだシステムによって国会の方だけを向いていればよい.これは結局,長い時間では,NHKの一人一人の人の人格を破壊し,人生をダメにするだろう。

第五の原罪が「テレビ受信機が増えたときに受信料を下げなかったこと」である.もともとNHKの受信料というのは家族制度があり,一家に一台のテレビがあることを想定していた.

だから,まさか「収入のない息子」が下宿で見るテレビに受信料がかかるなどということは想定もしていない.もともとシステム自体が想定していないのだ.

実はNHKのような「電波」の商売には他の商売と決定的に違うシステムが動く.それは「自分は同じ電波を流しているのに,受信機の数が3倍になると,受信料が3倍入る」ということである.

視聴率が30%の時にNHKが受信料を決めたとすると,その時の受信料が「経費に見合った適切な受信料」だったのである.それが90%になっても,お金を出してテレビを買い,電気代を払っているのは買った方であり,NHKは同じ電波を流し続けている。

つまり,経費は変わらないのに,収入が3倍になった.

このときに受信料を3分の1にしなかったということは,不当な受信料を取ったことになる.これが後に,NHKを歪ませた.たとえば,BSなどの多くの電波ができ,さらに1990年を基準にしてCO2を80%も増やした原因となっている。

つまりNHKはいったん,不当利益を受信者に返還して,それから再出発しなければまともにはならないのである。

経費が同じなのに収入が3倍になったとき,せめて苦労した時代の受信者に恩返しをしなければならないだろう.「取るものだけは取り,返すべきものは返さない」というのは誠の無い人(狡い人)のやることであり,狡い人が誠実みのある番組を作れるはずもない。

NHKのこの4つの原罪をNHK内部から指摘せず,黙っているところに現在のNHKの誤報の原因がある.原因を取り除かないとNHKの報道は正しくならない.

(平成21514日 執筆)