先回の内需の問題は,経済ばかりではなく,現在の日本の大人の「両価性(異なった価値観のことを同時に言っても本人が気がつかない精神病)」をも示している。

「CO2の削減のために電気をこまめに消そう」といって「電気自動車に補助金」とか「高速道路1000円」というのがそれに当たる.NHKが「明日のエコでは間に合わない」とテロップを流し,NHK自身は電気使用量が80%増になっているなどがそれにあたる.

昔はこれを「あいつは口から出任せだ」と言い,信用されなかったが,今では日本の指導者の多くが「出任せ」になった.

ところで,現状の憤激はそのぐらいにして,今回は「グローバリゼーション」について考えてみたい。

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600年前,大型帆船ができて,世界は第二回のグローバリゼーションを迎えた.第一回のことは今回は割愛する。

この第二回のグローバリゼーションで起こったことは「ヨーロッパの地平線の拡大」と「海賊の出現」であった.コロンブス,ヴァスコダガマ,そしてマゼランがその先駆的役割を拓き,「アメリカ大陸発見」という言葉に代表されるように,ヨーロッパにとっての地平線の拡大であった.

もちろん,アメリカ大陸は数億年前から存在するのだから,「アメリカ大陸発見」という言葉がいかにヨーロッパ中心で歴史を見ているかが分かる。

でも,これは昔からアメリカに住んでいたマヤ文明,インカの人たち,そしてインディアンにとっては大きな災厄となる.大規模で国家的な海賊が国を襲い,人を殺し,そして略奪した.

初めは,スペイン,ポルトガルだったが,そのうちスペインの海賊船をイギリスの海賊船が襲うということまでおこり,第二回のグローバリゼーションは醜悪な姿の内に終わる。

第三回のグローバリゼーションは,200年前,鉄でできた軍艦と蒸気機関の出現で始まる。それまで木製の帆船では航行に限界があり,さらに集団で頻繁に遠い外国へ旅立つことは不可能だったので,勢い,「少ない勢力の荒くれ男」という組み合わせになり,それが夜中にサンゴ礁の島に訪れて,その住民を奴隷として連れ去るというイメージだった.

ツバルの昔もそうだった.

ところが蒸気機関をつんだ鉄製の軍艦ができると,荒くれ男の時代は去り,制服を着たイギリス将校が出現する。

貴族の子弟の彼らはスマートで背が高く,朝になると給仕が差し出す何段重ねかのホットケーキにタップリと蜂蜜をかけて食べた。世界のどこにいっても同じ食事をしながら規則正しく侵略する時代が到来したのである。

「植民地の時代」,それはヨーロッパやアメリカに富をもたらし,その代わりに,アジア,アフリカ,南アメリカなど世界の多くの国が被害を受けた.

植民地を持った国はたった10カ国にも満たなかったが,植民地にされた国はその10倍になった.世界的に悲惨な時代であり,それはヨーロッパに素晴らしい文化をもたらした.

しかし,それも150年しか持たず,第三回のグローバリゼーションは植民地を持った側(ヨーロッパ)の内部矛盾が原因となり,第二次世界大戦という激動のうちにその幕を落とす。

このように,グローバリゼーションというのは「移動手段の革命」によって起こる。第一回は馬,第二回は帆船,第三回は蒸気機関,そして1990年から起こった第四回は通信である.

グローバリゼーションという言葉は経済でよく使われるが,第四回のグローバリゼーションは経済活動で始まったのではない.ソ連のグラスノスチ,そしてそれによるソ連邦の崩壊という政治的事件でその姿を現したのである。

馬,帆船,そして蒸気機関はすべて「物」の移動を促進したので,それに伴って動いたのは,剣(つるぎ),荒くれ男,そして大砲だった.でも,情報は平和的であり,国家を内部から崩し,お札を数字にした.

お札が数字にならなければ,情報という移動手段は経済活動にはそれほど大きな影響をあたえなかったかも知れない.つまり,経済情報の伝達速度は圧倒的に速くなっても,それを具体的な活動に結びつけようとしてもお金が動かないので,そこがネックになったはずだ.

その場合は,情報が先行して,お金が動かないので,今回のような金融崩壊は起こらなかったと考えられる。つまり「頭」が「行為」より遙かに先に行くからだ.

ところがお金が数字になり,瞬時に経済ニュースと同じ速度で動くようになると,人間の頭の回路に情報が動いている間(考えている間)に,お金が動くからパニックになる。なにしろ,お金は人間の欲望と恐怖を拡大する。

かくして第四回のグローバリゼーションは,第1にソ連邦の崩壊,第2に金融崩壊を起こした.そして時代はさらに前に進もうとしている。

私は第3がマスメディアの崩壊だと思う。現在のようにNHKが虚偽の報道を続けても,インターネットなどの情報網がある限り,虚偽が崩壊するのは目に見えている。

そして,あまり予想はしたくないが,第4は「政党の崩壊」だろうと思う。二大政党などは無くなり,すべては個人の政治家の資質だけが問われるだろう。なぜかというと,情報が正しく,まんべんなく伝わると,「何が良いか」がハッキリするので,「政策の差」は消滅するからである.

現在の日本に「政策の差」があるとすると,それはNHKの誤報によって事実認識が複数あるからである.

つまり私の解釈によると,すでにマスメディアも政党も崩壊しつつあるので,必然的に誤報を流さざるをえない・・・それは自己のアイデンティティを保つための前提になっていると考えているからである。

そこに環境報道,金融報道,政策報道におけるNHKの誤報の必然性があり,それが,次の崩壊をもたらそうとしているのである.私がNHKの誤報をことさら問題にしているのは,このような時代観によっている.

(平成21420日 執筆)