国民がお金を余らせると,そのお金は「貯金」することができないので,政府が使い切ってしまうという原理原則を前回,説明した.

これは結果的に増税になるのだが,国民が気がつかない税金ということができるし,政府としては国民が自分の意志で節約したのだから,政府が使ってやっているという気分である。

このことも細かいことを解説しようとすると長くなるので,主要な道筋だけで先に進みたい。

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「内需拡大」と言われて久しい.おそらくは政府の要人や産業界の指導部,そして経済学者はここ20年ぐらい,ずっと「内需拡大こそが大切だ」と言ってきた。

でも,彼らは心の底では必ずしもそうは思っていなかったと疑っている。

理由は簡単で,内需拡大のポイントは,消費税率の低減,賃上げ,年金・医療の安定,そして環境行政の後退の4つだからである。

日本の国民が将来を心配せずに,内需・・・つまりは買い物や贅沢・・・にむかうことができるためには,消費をしてもあまり税金を取られず,賃上げがあって毎年,少しずつ豊かになり,年金や医療が安定していて老後の心配が無く,さらに「もったいない」とか「節約」より「人生を楽しもう」ということになることが条件だからである。

1) 消費税下げ

2) 賃上げ

3) 老後の安定

4) 環境は大丈夫

の4つの条件の下でお金が使えるようになる。

ところが,「内需拡大」を言う人たちは,この4つに対して,全部,反対の方向に向くようにしてきた。強いて言えば指導者だけは,内需拡大に進んだといえる.

消費税は3%から5%に上がり,さらに10%にしようとしている.これでは消費は停滞する。

2000以後,日本の企業は収益を上げてきた.その収益の分配はほとんどもっぱら経営陣に与えられ,従業員には分配されなかった.分配がいかに不公平だったかは多くの人がすでに指摘している。

年金の不祥事,後期高齢者医療などの出現によって,40年前に政府が約束した「社会保障でゆりかごから墓場まで」という安心感は消えた。なにしろ,国の機関である社会保険庁が,5000万人の年金不記載,故意の年金減額記載などをしたのだから,この影響は計り知れない。

さらに,何もないのに創造された環境問題で,「節約」の倫理的枠組みをはめられて,国民は動けなくなった.

その結果として年間40兆円があまり,それを政府が使うことになった.この経過に「内需拡大」の影を見ることはできない.日本人は家畜のように働き,アメリカに製品を輸出し,そのドルをまたアメリカに献上するという政策だったのである。

日本政府と日本の産業界,それに経済学の指導者が「考えに考えて」とった政策だから,それが日本にとって良かったのだろう.つまり国民は我慢して働き,会社が収益を上げると重役が取り,お金が余ればアメリカに上げるというのが日本の繁栄する方法だったのだろう。

でも,もちろん,このような政策では「内需」は拡大しない.だから実際にも内需は拡大せず,そのほかの理由もあって,アメリカの劣位ローンが破綻すると,日本も大きな不景気に見舞われるという独立国家ではないような状態に陥った.

人間とは単純なもので,「もったいない」と言って感激し,「内需拡大」といって納得する.この二つが正反対のことであることに気がつかない.ちょっとした言葉のあやであり,内需拡大は「贅沢をしなさい」と言うことですよと解説すれば,それで矛盾に気がつく.

このシリーズはジックリと進めたいと思うので,一体,「環境」と「内需拡大」は調和するのか,日本はアメリカに貢いでいて世界のトップのいる事ができるのかについて,順次,話を進めていく。

また,アメリカの劣位ローンが破綻すると日本が破綻するという現象は,経済のグローバリゼーションにも関係があるが,一体,グローバリゼーションの実態は何か,それに対して経済としては何をしなければならないのかについても整理を勧めておかなければならないだろう。

でも,今回は「内需拡大」というのは誰もやる気がなかったと言うことだけを示しておきたい.

(平成21416日 執筆)