15兆円という膨大な補正予算が実施されようとしている.このお金を出す人は,もちろん麻生首相ではなく,国民であり,とりあえずは国債などで資金の調達が行われるが,もちろん,政府自身はお金を持っていないので,やがて国民から消費税という形で徴集される。

このことだけでも理解しておかなければ,なかなかスッキリしない.そのほかに,これまで「もったいない」と言っていた政府が,なぜ「買い換え促進」に急変したのかの理由も知っておかなければならない.

さらには,一見,関係が無いように見える北朝鮮のミサイルも深く関係している。

これらについて個別に問題点を指摘するのではなく,全体としてそのしくみを理解し,真に私たちが判断できるように,私自身の勉強もかねて,数回にわたって書いてみたいと思う。

第一回は,まず直接的な補正予算いついてである.

政府は景気対策で,国民の1万2千円ずつ配った.もちろん,これは税金を払ったものが帰ってきたのだから,「政府が配った」のではなく,単に払ったものの一部が戻ってきたということである.

国民の数は約1億2千万人であるが,そのうち,赤ちゃんなどがいるので,納税者というと(数え方があるが)おおよそ7000万人から1億人である.ここでは概算をしっかり頭に入れるために「日本国民1億人」として数字は出しておく。

政府が一人あたり1万2千円配るということは,1万2千円に1億人をかけるのだから,1兆2千億円になる.

今度の補正予算は15兆円だから,国民一人あたりに直すと,15万円である。つまり夫婦に子供2人という家庭では,実に60万円が出される。

このお金が,古い自動車の買い換え,テレビの買い換え,エコカー(?)の購入,太陽電池の購入などに充てられる。

まず,第一に簡単に表現すると,

1) 補助金を使わない家庭は60万円,丸損する.

2) 補助金を30万円もらった家庭は30万円損をする。

3) 平均すると60万円はもらえない。

といえる。

このからくりをまず解説したい。

補正予算に使う資金はさまざまな形で出される.だから,国民から見るとわかりにくいし,テレビの解説などでも政府に「配慮」してわかりにくく説明する。でも,民主主義というのは重要なことを国民が判断するのだから,できるだけわかりやすく,専門的にならないように説明しなければならない.

私は民主主義を信じているので,専門的には少しの厳密性を失っても,わかりやすい方を優先する。 今後も私の方針は,この点では変わらない。

15兆円のお金は「国債」を発行して調達する。つまり,政府が「国債」を印刷して,それを国民が買い(実際には銀行が半分を引き受けると思われるので,それは後に解説する),そのお金を政府が使う。

ここで,まず錯覚してはいけないのが,「国債」は「債権」,つまり借金だから借りた人が返さなければならないし,普通はそう思っているが,実は国は国債を発行してお金を取るだけで,返す意志はない。

つまり,どうなっているかというと,「国債」だけは「返さなくても良い借金」なのである.たとえば15兆円の国債を発行して,それを国民が買う。 しばらくして,国民がその国債を持って行くと,政府は15兆円の税金を徴収して,国民に返すだけである。

借金した政府の手元には15兆円はない.そのお金はどこに行ったのかというと,テレビを買った国民の手元に帰っている。だから政府の手元にはお金が無いので,返そうと思ったら,消費税を徴収するしか方法が無い。

もう一度,簡単にこのトリックを説明すると,1億人の国民から一家庭あたり60万円を徴集し,それを「家電製品や自動車を買う一部の人」に配るということである.

それが分かると,国民は「損をしないようにと我先に買う」だろうと政府は考える.そうすると消費量が上がって景気が回復するという分けだ.

国民一人一人はこのしくみを良く分かっていても,みすみす損をするのも悔しいから,いらないものを買ってしまう。 (もともとアメリカの金融が崩壊して日本が不景気になるという話自体が奇妙で(これも解説する予定),日本人が家電製品とか自動車を買控えているのは,「もったいない」と思うからだ.

また太陽電池はさらに奇妙だが,この話も複雑になるので,後へ回す。

「15兆円の追加,補正予算」などと言われると,国民もなんとなく納得するが,「一家庭あたり60万円徴集して,家電や自動車に配る」と政府が言ったら国民はどうするだろうか?

私は「どうせ,取られるなら自分が使う」と言うと思う。

私が日本政府は狡いというのはこのことを言っている.ありのまま言って,「15兆円の補正予算を組む方法と,一家庭で60万円を使って貰う「購買券」を発行する」というのとどちらが良いですか? と聞くのが筋だろう。

(平成21411日 執筆)