アメリカはなかなか魅力的な国だ.その魅力はなんと言ってもバイタリティーやフロンティア精神だろう。

人柄も明るい。アメリカ人と接しているとカーボーイや,ものにこだわらない笑い飛ばすところがあり,それがどちらかというと地味な日本人にはうらやましくも感じられる。

それでも,他人の話をジックリ聞いてくれるし,意見の相違があるからと言って相手を罵倒したりはしない.感情を後ろに下げて,議論することもできる.個人というものを大切にするのもアメリカである。

さまざまな人種や出身の違う人が一緒に住んでいるから,「あうんの呼吸」では理解できないので,しっかり論理的に相手に自分の考えを伝え,「口に出たこと」に基づいて相手を判断する傾向もある.

その反面,アメリカは激しい.弱い人は生きていけないという雰囲気すら感じられる。 いわば弱肉強食の世界だ。

そのアメリカが,「製造業をやめて,金融や法律でいく」と決めたように行動している。もうかなりになる。 アメリカはひたすらドルを刷り,借金を重ね,豪華な生活を楽しんできた.

現代の彼らにとっては,ものを製造するというのはもう古く,眼中にないように見える。 自動車のビッグ3はすでに過去のものであり,人間の活動としては,二流であると感じているようだ.確かに,フロンティア精神ではそうかも知れない.

フォードがベルトコンベアー方式でT型フォードの製造を開始してから90年も経つ。「何時までも自動車か?」という感覚はアメリカ社会にある。 日本が自動車製造を尊重し,アメリカが軽視しても,どちらが正しいかは分からない.

アメリカはあっさりしていて,日本はしぶといのかも知れない.

アメリカはフロンティアが見えて,日本は見えないのかも知れない.

私は「ものづくり」が好きだ。 でも,それはもしかすると私の中の古い体質かも知れない.すでに「もの」はあふれている.でも「より優れたもの」が人生を豊かにしてくれるのも確かである.

それでもなお,「ものづくり」はすでに人間の活動の中心ではなく,新しい時代は「額に汗しないで人生を送る時代」なのかも知れない.

アメリカがドルを刷り,生産を止め,日本が召使いのようにアメリカ人のためにものを生産してきた.だから今回の金融危機のように,アメリカ人がローンを組めなくなると,アメリカの株価より日本の株価の方が下がる。

世界全体がアメリカ人がドルを刷ってローンを組み,それで生活するのに頼っていたと言うことは,アメリカの路線が正しく,単に短期的な金繰りとか,サブプライムローンのようにリスクの大きな金融活動をしたという小さな間違いかも知れない.

国は必ず衰退し崩壊する.すべての道が続いていたローマも,無敵艦隊のスペインも,七つの海を支配したイギリスも.だからアメリカも衰退して崩壊するのは間違いない.

アメリカだけが例外と言うことはない.すでに南北戦争の頃のアメリカから150年を経ようとしている。そろそろ衰退の頃でもある.

衰退とは既得権益にしがみつく人が増え,日本で言えば税金の利権に群がるようになると,その国全体の活力が低下して,衰退するのだが,その意味では日本の方が衰退の兆候があるような感じでもある。

グリーン・ニューディース政策というのは完全に後ろ向きだ.今までのアメリカの場合,新しい技術かビジネスモデルをテコにして新たな発展をした.その点では,グリーンニューディールには何の新鮮みもない。 日本の知識人の中にはアメリカが「グリーン・ニューディール」というとその英語の響に幻惑されて,盛んに唱えて居る人もみるが,悲しい現象である。

グリーン・ニューディールは単なる失業対策で,日本の環境政策に似ている.「現在より能率の悪い方法を採用する」というのは社会の衰退に結びつくからである。

これまではアメリカが打ち出してくる政策は,新しい技術やビジネスモデルに支えられていて,それがアメリカの繁栄をもたらしてきた.やはり,金融と法律という道を選択したアメリカはその道をこれからも進まざるをえないのだろう。

(平成21211日 執筆)