2009年1月22日,日本のマスメディアは一斉に,南極の温暖化について報道を行った.
「米ワシントン大などのチームは,南極大陸が50年間、温暖しているとする研究結果を発表した。
「南極大陸は、南極半島など一部を除けば温暖化していない」とする従来説を覆すもので、地球全体の温暖化の将来予測にも影響しそうだ。 22日付の英科学誌ネイチャーに発表する。」
これで,従来から南極点が寒冷化しているというNASA,変化が無いというIPCCに加えて,温暖化しているというデータもそろったことになる。
【ニュース解説】
今回のニュースはきわめて珍しい事件である.
すでに,日本ではNHKを初めとしたメジャーな報道機関が,ここ数年、「南極が温暖化している」と報道していた.だから,今回の発表は日本では「ニュース」にならないはずである。
また,この研究結果は科学雑誌「ネイチャー」に掲載される.およそ「論文」というのは,新しい知見しか載せてくれない。 だからネイチャーの掲載を決定する審査員は「南極が温暖化している」というのは,今まで発見されていない「新しい知見」と判断したのだ.
この記事が「ニュース」になるのは,「日本以外の国」に限定される。 日本ではすでに「南極は温暖化している」と報道されていたから、日本でニュースになることはない.
この記事が「学術雑誌」に掲載されるのは,「日本以外の国」に限られる。 日本の審査では「南極が温暖化しているのはすでに知られている」と掲載を断られるからである。
このニュースは一般には,「やはり,南極は温暖化している」という印象で受け止められ,かつて「南極は温暖化している」という記事を書いた記者は,得意げだったのが気になる。
その意味では記者は,まずこれまで何を根拠に南極が温暖化していると書いたのかを最初に示す必要がある。
このニュースは,日本のマスメディアが,誤報を続けているという明確な事実を指摘したものとして,後生に残るだろう。
(平成21年1月23日 執筆)