私が企業で研究していた頃,ある外国の首脳部が研究所にやってきた.私は自分たちが開発した技術がどんなにすばらしいかを強調したが,相手は平然としている.
日本には工業資源がない.だから必死になって技術を作り,それでなんとか生きてきた.ところが相手は遊んでいる.それでも,日本と対等なのは彼らは資源を持っているからだ.
彼らは平然として,「気に入ったら買ってやる」と言う.私の部下は冬の寒いときでも,長靴を履いてプラントを回り,技術を作ってきた.そんな辛さと彼らの傲慢さ・・・私はジッと我慢した.今に見ていろ!
まるで親の財産を持った人が,苦労してきた人の作った物を金で買っていくようなものだ.
若い頃,そんな経験をした私にとって見れば,温暖化は天佑のように思える.日本は工業資源には恵まれないが,自然環境は世界一だ.温帯の島国,二大海流,偏西風,中央に山脈・・・すべては温暖化の影響を緩和してくれる.
それに比べて「工業資源があるから,お前たち,命令を聞け!」と今まで威張っていた国は軒並み大陸にある.もし温暖化が悪影響を及ぼすのなら,その国が被害を受けるだろう.
海と空気では熱容量は3500倍もある.空気が1℃あがっても,海水は0.003℃しかあがらない.都市化したところは別だが,沖縄の人が夏でもクーラーをかけないのは「海の幸」のおかげである.
大陸は少しの気温の変化も敏感だ.おおいに対策を採らなければならないが,日本は四面が海だから,その影響はほとんど無い.少なくとも世界で一番の自然に恵まれている.
人の不幸を喜ぶわけではない.でも,今まで日本の技術者は工業資源がなく,人口密度が高い日本で,歯を食いしばって努力してきた.そしてその努力した結果はいとも簡単に資源国にとられてきたのだ.
今こそ,リベンジができる.
温暖化すると,相対的に日本は有利になるだろう.むしろもっとも良い環境になるかも知れない.作物はとれ,雪害は無くなり,楽しい人生を送ることができるだろう.
日本の雪国の人は我慢強い.それは雪国の生活が厳しく,じっと我慢してきたからだ.でも,温暖化すれば楽になる.そして沖縄も苦しむわけではない.
それでもまだ平安時代より1℃は低いから,破滅的にはならない.明るい未来がみえてきた.
(平成20年12月12日 執筆)