レジ袋を止めるか、NHKを止めるかのどちらを選択するかを、「環境」や「CO2」の視点から理論的に決めるのがかなり難しいことを示しました。

レジ袋については、北海道新聞が「レジ袋を廃止すべし」というご意見を、私との対論の形で掲載されたので、そのご意見を評価してみたいと思います。ただ、あくまでも個人的な非難中傷ではなく、科学的に評価するつもりです。

まず、相手になっていただいた先生は「エコバッグ運動の目標は環境負荷を減らすことにあります。」としておられます。エコバッグ運動が環境に関係があるとすると、環境負荷を増やす為ではないでしょうから、これは納得できます。

次に先生は「レジ袋を使わないようにするには、あくまでプラスチック容器や包装全体を削減するためです。」と言っておられます。

レジ袋を使わないことがプラスチック容器や包装の削減になるかは別に検討することとして、「プラスチック容器や包装の削減」が「環境負荷の低減になる」というのは、まだ明確ではありません。

おそらく先生は、紙面の都合で割愛されたのではないかと思いますが、「容器」や「包装」は中身の製品を守るものですから、資源や製品全体を考えて、どのぐらいの包装が適切であるかについての学問的検討が必要です。

日本人が一年に使う資源量は年に20億トン。これが製品になるのですが、プラスチック包装材料全体は年間430万トンですから、製品と包装の割合は、465分の1です。

でも、環境を守るため、最善の「中身/包装材」の割合がどの程度なのか、まだ解明されていません。「包装がない方がよい」というのは感覚としては納得できるのですが、包装がゼロになったら製品が傷むので、資源の有効利用からは悪い結果になります。

ゼロがダメで、現在がもし「過剰」なら、その間に適切な包装量があるはずです。

レジ袋では、約10キログラムの買い物を、5グラムのレジ袋で運びますので、その比率は2000分の1になっています。レジ袋はずいぶん工夫された物ですから包装材としては、もっとも省資源のものです。

もっとも資源量の少ないレジ袋を止めるのには特別な理由がいるでしょう。もし、それが無ければレジ袋のメーカーにとって、学問的な差別をすることになるからです。

つまり、

「環境負荷を減らす」ということと「容器や包装全体を削減する」というのは、直ちにイコールではないと私は考えますが、先生に反論をお伺いしないといけないでしょう。

ただ、環境学としてみると、新聞に対論をするような先生や私自身は学問をベースにして議論するのですから、製品と包装材の最適割合が学問では出ていないから感覚で話をするというのでは読者に申し訳ないと思います。その点、できるだけ急いで環境学を構築しなければならないと反省しています。

次に先生は「プラスチックの国内生産量の半分近くをレジ袋やラップなどの容器包装が占めています。」とされています。

2003年付近の統計では、プラスチックの国内生産量は1400万トン、これに対してプラスチック容器包装は430万トンですから、その割合は、31%です。

先生は「半分近く」と言われていますが、31%ですから「半分近く」というのはすこし無理があるように思います。むしろ3分の1と言われた方が良かったでしょう。

学問は政治とは違い、自分の「意見」を主張するのではなく、「論理」を展開し、その結果として必然的にある「結果」に到達するものですから、特に自分の「意見」に都合のよい数字を使うことは厳しく禁止されています。

その点ではつい、口が滑ったという類ですが、学者としては、むしろ「約30%を占めています」と表現した方が良かったでしょう。

ところで、1400万トンと430万トンを比較するだけでは、素人の議論と言われても仕方がありません。

つまり、統計を見ればプラスチックの生産量が1400万トンであること、プラスチック包装材料が430万トンであることはすぐわかります。もしデータにすこしの紛れがあるとしてもそれは小さな数字を問題にすることになります。

でも、環境とはそれほど直接的なものではありません。1400万トンのプラスチックを製造するのに、およそその3倍の4000万トンぐらいの石油を消費します。1400万トンというのは最終的な製品の形になったもので、製造するときに石油を消費するからです。

そのうち、包装材料はポリエチレンのように「もっともエネルギーが少なくてできるもの」ですから、430万トンの製品を作るのにその2倍の860万トン程度が消費されますが、そのほかの1370万トンは残りの3140万トンを使うことになります。

つまり、環境学として見るなら、包装材料の割合は22%程度になりますから、およそ5分の1ということです。

そうなると先生が新聞で「半分近く」という表現は「5分の1程度」とした方が良いでしょう。ずいぶん、印象が違います。

私は2000年に書籍を出版したときに、製造時に必要な石油やエネルギーを「背後霊」という言葉で呼びましたが、その後、物質研究所などでは「隠れた資源」と表現されています。

見えるか見えないかはどの程度の学力を有するかで決まりますが、いずれにしても自分の目に見えるものだけを考えては、到底、学問というレベルではないでしょう。

1) 包装材料を減らすことは環境負荷を減らすこととは違う。

2) プラスチック包装材料はプラスチック全体の5分の1ぐらいの環境負荷である。

ということを指摘しておきたいと思います。

(平成201031日 執筆)