学生と話しているうちに、おもしろい結論に達した。しかも、奥が深い。学生は時として経験がなく乱暴だが、社会的立場がないだけに、その考えはなかなか新鮮である。
学生:「先生、なんでレジ袋を止めることになったのですか?」
わたし:「石油の節約らしいよ」
学生:「ボク、最初、何を言っているのかわかりませんでした。ボクにとってはレジ袋みたいに大事なものはないのに・・・」
(しばらく話をした後・・・)
学生:「なぜ、NHKを止めないのですか?」
わたし:「えっ!?」
学生:「ボクにとってはレジ袋は大事だけど、NHKはいらないんです」
わたし:「君、NHKは見ないの?」
学生:「ええ、みません。民放があるし、ニュースはネットで見てます。先生、NHKを止めれば石油は節約できますよね」
わたし:「そりゃ、そうだ。比較にならないよ。石油は格段に減るだろうね」
・・・・・・
現代文明は石油を大量に消費する。だから生活の一部を制限しなければならないという意見を持った人たちがいる。その一群の人たちは、たまたま買い物の時には「エコバッグ」が好きで、ゴミを捨てるときには「専用ゴミ袋」が好きだ。
だからレジ袋を止めると石油はかえって多く使うけれど、なんとかごまかしてレジ袋を追放した。私は正しいことしか学生に言えないので、まさか「レジ袋は石油の節約になる」とは言えない。
その一群の人たちは、NHKは見るのだろう。お金持ちで視聴料を払うのにも学生のようには苦にならない。だからレジ袋を追放するときにNHKとの比較などしない。
学生はレジ袋とNHKを選べと言われたらレジ袋が大切という。私もそうだ。NHKは誤報を続けて視聴料を強制的に取るから、「いらない」というより「迷惑」だ。
でも、レジ袋がいらない人、NHKがいらない人・・・いろいろな人がいて、この社会が営まれている。レジ袋がいらない人はエコバッグを持っていけば良いし、NHKを見たくない人は視聴料を払わなくても良い。
そんな自由な、他人の価値観を認める社会に住みたい。
戦争では日本人310万人が死に、その中には原爆や空襲で無残な死を遂げた子供も多くいた。その戦争の前にも「平和を愛する人」はいたけれど「非国民」というレッテルの前に沈黙した。それは戦争で死んだ子供にとっては許されないことだ。
でも、社会は時としてヒステリーになり、NHKを止めても民放があるから何も困らないのにNHKを止めずに、レジ袋を止める。レジ袋を止めたら困る人は「少数派」ということで排斥される。
イヤな世の中になったものだ。学生の言い分は正しいと私は思う。
(平成20年10月22日 執筆)