人物を紹介するWikipediaの記事に、その当人の批判をどの程度、記載することができるかについて具体的な例を挙げて、問題点を指摘しておきたい。
前回、私のことを紹介しているWikipediaが、私の昨年一年だけの活動を中心に紹介し、かつ、私の活動ではなく、私の活動に対する批判の方が記載量が多いということになっていることを指摘した。
Wikipediaの武田の批判の記載の最初に、
「アルキメデスの原理を用いた主張は、地球上の他の様々な場所の氷の融解や海水の熱膨張により海面は上がり続けており、現に『環ウソ』においてもIPCCの報告に基づき海水面上昇の理由として「海の水が膨張するから」と明言しており、海水面上昇が起こらないと主張しているわけではない[16][17]。そもそもアルキメデスの原理に必ずしも言及する必要はない[要出典]。」
とある。(平成20年7月21日の記載事実)
まず、この記載が科学的事実と異なるところを指摘する。
武田が著書で指摘したことは、
1) 北極の海氷が融解しても海水面が上昇しないのは、アルキメデスの原理で説明できる、
2) 海水面は熱膨張によって上昇するが、30年で10センチ程度であり、決して報道されているように数メートルではない、
3) 日本で誤った報道や説明が10年以上も続いているのに、環境省は何ら手を打たなかった、
ということである。もし疑念があれば、この記述をした著者は私の著書を熟読していただきたい。
だから、指摘自体が私の記述内容と違うし、それは私の講演やネットをご覧になっている人も了解してくれるだろう。
また「アルキメデスの原理に必ずしも言及する必要はない」という記述は不適切である。つまり私がアルキメデスの原理で説明したのは、中学校の理科で習うことを応用すればある程度は報道の間違いがわかるということを指摘している。
同じ事実でも人によって説明の方法が異なることがある。それは批判対象にならない。
これほど事実の記載に誤りのあるWikipediaは社会的な意味があるのだろうか?Wikipediaはできるだけ正確に事実を記載して欲しいものである。まして、「海水面は熱膨張によって上昇する」と記載している書籍の批判として「海水面は熱膨張によって上昇する」という批判をすることは、論理性と誠意を失っている。
(平成20年7月21日 執筆)