2008年6月7日と8日は、のちに日本の放送法を深く研究する論文が出るとしたら記念すべき日になるだろう。
それはNHKがこの2日間のあいだ連続して行った「温暖化放送」で繰り返し放送法違反を犯したからである。もちろん放送法第3条の2違反だ。
放送法第3条の2は放送の魂の部分が表現されており、それは取材の自由、報道の自由などの近代の自由の獲得の歴史でも重要な部分である。
決定的な瞬間は 6月7日の午後、「科学者ライブ」というコーナーで次のような質問があった時である。
質問:「今、ご説明があったような、温暖化によって破局的な結果になるとしている学者の方は何割ぐらいおられるのですか?」
回答:・・・別の回答がテレビに流れた・・・
そのコーナーに出ておられた科学者と言われる方は5名だった。そして全員が「温暖化は破局的な影響をもたらす」と言っておられた。もし、質問に真正面から科学者が回答して「半分ぐらいは懐疑的なのではないか」と答えたとしよう。
その瞬間にNHKは放送免許取り上げである。5人の科学者を選んだのはNHKだからだ。だから、放送では聞かれた方が回答しなかったか、あるいは映像に細工が加えられたのだと思う。
放送法第3条の2、1項4号には明確に「二つの意見がある場合は、両論を示す」と記載されている。これは法律である
もともと、報道には取材の自由や報道の自由、言論の自由が保障されているが、それはやや「反政府」、「反権力」であることが前提である。もし時の権力と同じ情報を流すなら、官報だけがあればよく、いわゆる報道は不要だからだ。
政府は時として権力を守るための広報を行う。悪いといえば悪いが、それが人間である。この人間の悪さをカバーするために報道機関があり、自由が許されている。また学者はさらに遅れて真実を確認して発表する。それも反権力的なところがあるので、それを学問の自由で保護する。
もちろん、報道の自由や学問の自由で「得をする」のは市民である。市民はそれによって政府の陰謀を見抜き、選挙のときには正しく投票することができる。決して報道機関は恣意的に報道することは許されていない。
日本の放送法がこれほど明確に破壊されたのを見たことはない。NHK内部の記者の反乱、内部告発がまず優先だが、それが無ければ、私たちは「NHKを報道機関としては認めない」ということで、立ち上がるべき時が来た。
(平成20年6月8日 執筆)